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遠隔画像診断サービスの活用で地域のかかりつけ医として診断力を高めていきたい[クリニックアップグレード計画 〈システム編〉(38)]

No.5166 (2023年04月29日発行) P.14

登録日: 2023-04-27

最終更新日: 2023-04-27

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かかりつけ医機能の制度化を2025年4月に控え、地域のクリニックは「日常的な診療を総合的かつ継続に行う機能」の発揮がますます求められている。診療を総合的に行う上で重要になるのがさまざまな医療連携。連載第38回は、遠隔画像診断サービスを活用し、かかりつけ医として専門領域以外の疾患についても質の高い医療を提供することを目指すクリニックの事例を紹介する。

大阪府岸和田市にある「めぐみクリニック」の谷坂恵さんは、福井医大(当時)を卒業後、奈良県立医大脳神経外科に入局。奈良県内や大阪府内の総合病院の脳神経外科などに勤務しながら、日本脳神経外科学会専門医、日本頭痛学会専門医の資格を取得するなど豊富なキャリアを持つ。自身が頭痛に悩んだ経験から頭痛外来を備え、脳関連疾患に総合的にアプローチができるクリニックを目指し、2012年に同院を開業した。

2022年4月には、診療放射線技師として大阪赤十字病院に勤務していた夫の晃正さんがスタッフに加入。2021年に改訂された「頭痛診療ガイドライン」で一次性頭痛と二次性頭痛の鑑別に必須とされたMRI検査を実施するため、2023年1月に1.5テスラのMRIを導入、より質の高い頭痛診療を行う体制を整えている。

脳出血や脳梗塞といった脳関連疾患は、高血圧症・糖尿病・脂質異常症などの生活習慣病がリスクとなるため、同院では合併症の予防として生活習慣病の治療にも力を入れている。また健診にも積極的に取り組んでいることから、谷坂さんはかねて胸部・腹部CTについても精度の高い読影を行う必要性を感じており、2022年9月にクリニック向けの遠隔画像診断サービスを導入した。

京大と連携した遠隔画像診断サービス

同院が導入した遠隔画像診断サービスは、京都プロメドが小規模医療機関向けに提供する「京都ProMed  CL」(https://www.promed.jp/)。京都プロメドでは京都大大学院医学系研究科放射線医学講座に所属する放射線診断専門医が読影を行う。同大では、従来より医師を派遣して各地の医療機関の読影サポートを行ってきたが、限られた地域と時間での協力しかできなかった。こうした状況から、遠隔での画像診断サービスの提供を目的とし、京都プロメドが設立された。京都プロメドは、大学や総合病院と同等の環境の自社読影センターを有し、常時7〜8名の医師が議論をしながら、多角的な視点から診断を行う(図1)。

谷坂さんは、京都プロメドの画像診断サービスを導入した理由について、こう語る。

「以前は知人の放射線科の先生に読影をお願いしていましたが、MRI導入に当たり、スピードと確実性を高めるために遠隔画像診断サービスの導入を決めました。複数サービスの中から、京都ProMed CLを選んだ決め手は、導入時の手間や費用が少なくて済む点でした。専用の回線や機器が不要で、PCとインターネット環境があればすぐに利用できます。また初期費用や月額利用料はかかりません。京大と連携したサービスという信頼性も重視しました」

個人情報を含む読影依頼やレポート配信は、NTT西日本と提携し、一時的なVPN(仮想専用線)接続下で暗号化。セキュリティ面でも十分な配慮がなされている点も特徴だ。

読影依頼当日に所見が返送

京都ProMed CLの運用フローは、読影依頼するDICOM画像を保存したメディア(CD-R、USBなど)をPCに挿入、専用ツールを起動し、画像をアップロード、「読影依頼入力ツール」を起動し、①でアップロードした検査リストから選択。入力フォームに必要事項(個人属性や検査部位、依頼内容など)を記入し、依頼、「所見確認ツール」に表示された読影済検査リストの所見ボタンからPDF形式の所見(図2)を閲覧─という流れになる。

同院では、胸部や腹部CTの画像を中心に月平均約15件の読影を依頼している。

「最も多いのは胸部CTです。当院は肺がんの精密検査機関のため、見逃しのないよう疑いがある場合は読影を依頼しています。午前中に依頼すればほとんど当日に所見を返していただけるので、患者さんにすぐフィードバックできる点もメリットです。MRIでも私が読影して不安があるときは、確実な診断を行うため依頼するようにしています」(谷坂さん)

MRIとCTの効果を最大化する

谷坂さんは診療放射線技師の晃正さんとのタッグで、MRIとCTを活用し、地域のかかりつけクリニックとして質の高い画像診断を提供していくことを今後の目標に掲げる。

「今後、病院は入院加療や専門性の高い医療に特化する傾向が強まります。当院のようなクリニックがある程度の検査まで行うことで、患者さんは検査のために何度も病院に足を運ぶ必要がなくなります。ただ、正しい診断をつけるためには、自院だけでは限界があり、医療連携が必要になるケースも出てくると思います。遠隔画像診断サービスは地域のクリニックに求められる役割を果たすために重要なツールであると感じています」

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