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特集:高齢者が「風邪を引いた」と言ってきたら─コロナ禍における風邪診療─

No.5144 (2022年11月26日発行) P.18

進藤達哉 (兵庫県立はりま姫路医療センター総合内科医長)

黒田浩一 (神戸市立医療センター中央市民病院感染症科副医長)

登録日: 2022-11-25

最終更新日: 2022-11-24

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進藤達哉:2013年神戸大学卒業。神戸市立医療センター中央市民病院総合内科,亀田ファミリークリニック館山を経て,2022年より現職。感染症専門医。感染症診療の傍ら,妊婦健診のできる家庭医としてウィメンズヘルスに取り組む。

1 高齢者の「風邪」
・高齢者は風邪を引きにくいとされており,1年当たりの急性気道感染症の罹患回数は,乳幼児と比較すると1/4程度に減少する。高齢者が「風邪を引いた」と言ってきたときは,その背景にある真の主訴と病態を読み解く必要がある。
・コロナ禍になり,完全に風邪は除外診断になったため,風邪の診断のためには風邪以外の重要な鑑別疾患をまず除外することが必須となった。

2 コロナ禍における風邪診療
(1)新型コロナウイルス感染症の診断
・コロナ禍において高齢者が「風邪を引いた」と言って来たら,まず除外すべきはCOVID-19。
・vital signが崩れているときはCOVID-19の検査と同時にFever work upや初期蘇生を開始しなければならない。
・抗ウイルス薬の適応を逃すことは絶対に避けるべきであり,院内で検査ができないとしても必ず当日中に検査を提出するように努力すべき。
・検査が陰性でも代替診断がない場合は,COVID-19の可能性を念頭にFull PPEで原因検索を行う。
(2)主訴ごとの重要鑑別疾患
①咽頭痛:急性喉頭蓋炎とLudwig anginaは高齢発症も多く報告されており注意が必要である。
②咳嗽:急性咳嗽で喀痰も伴う場合は化学性肺臓炎,誤嚥性肺炎が強く疑われる。
③鼻汁:鼻汁が主訴となる緊急性が高い疾患はほとんど存在しないため,それほど焦って検査をすることはない。
④倦怠感/食思不振:問診と身体所見からある程度,検査前確率を推測し,疑わしい疾患と緊急性が高い疾患から優先的に精査を進めていく。
(3)検査陰性で,精査を行っても代替診断がつかないとき
・初回で抗原定性検査を行ったのであれば,できれば翌日に再検すべきであり,その場合,感度を高めるために核酸増幅検査を選択することがより望ましい。
・特に症状出現当日の抗原定性検査は感度が下がるため,初回検査が症状出現日だった場合は,必ず翌日に再検するように心がける。

3 高齢者ならではの注意点
(1)ACP
・終末期には70%の患者で意思決定が不可能になってしまっている。
・COVID-19と確定したときには必ずACPを行うようにし,万が一重症化したときにどのような対応を希望しているか,そして診断時の流行状況でその希望が叶えられる見込みがあるかを患者とキーパーソンと医療者の間で共有しておく必要がある。
(2)患者説明は丁寧に,かつ感染リスクに注意
・認知機能が低下している可能性がある高齢者に対しては,息子や娘にも同様の説明をしたり,説明用紙を渡すなどの工夫が必要である。
(3)ポリファーマシーと副作用に注意する
・薬物治療の第一選択はパキロビッドであるが,併用禁忌薬が多く,アゼルニジピンやリバーロキサバンなど,多くの高齢者が内服している薬も含まれているため,注意が必要である。
・高齢者は定期内服薬がある場合が多く,ポリファーマシーのリスクが高い。
(4)フォローアップ場所を考える
・家族の負担が増えることは望ましくないため,電話・オンライン診療によるフォローアップを行うか,特別訪問看護指示書を記載し訪問看護を依頼するという方法も検討する。

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