株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

特集:CT画像でみる薬剤起因性の腹部救急疾患

No.5143 (2022年11月19日発行) P.18

田中絵里子 (石心会川崎幸病院放射線診断科)

登録日: 2022-11-18

最終更新日: 2022-11-17

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

田中絵里子
1998年滋賀医科大学卒業。放射線診断専門医。昭和大学藤が丘病院兼任講師,昭和大学横浜市北部病院兼任講師。再現性のある画像診断をめざしつつ,臨床での多様性に学ぶ日々を送っている。

1 抗菌薬
▶抗菌薬に関連する大腸炎として,偽膜性腸炎,抗菌薬関連出血性大腸炎がある。病歴に加えて炎症を示す浮腫の分布が手がかりになる。
▶偽胆石はセフトリアキソン投与に伴い出現する胆泥や胆石様の構造として認められる。

2 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)
▶非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は,上部消化管では潰瘍やびらんを形成し出血や穿孔の原因となる。
▶小腸障害では,CT enterographyを用いると膜様狭窄が描出されうる。

3 腸間膜静脈硬化症
▶腸間膜静脈硬化症は,右側結腸の腸管壁から腸間膜静脈の石灰化をきたす。CTや腹部単純X線画像では,特徴的な静脈の石灰化が認められる。加味逍遙散などに含まれる山梔子が関与している可能性が高い。

4 抗凝固療法中の血腫
▶抗凝固療法中には,出血性合併症がある一定の頻度で出現する。どこでも出血する可能性があり,必ずしも1箇所とは限らない。
▶症状は非特異的で,診断に際してはCTやMRIなどの画像診断が有用である。抗凝固療法中の血腫は必ずしも高吸収とならないことに留意が必要である。抗凝固療法に伴う消化管の壁内血腫は,血性腹水を伴う腸管壁肥厚として認められる。

5 カリウム吸着剤投与に伴う消化管穿孔
▶高カリウム血症の治療に用いられるカリウム吸着剤では,硬便を形成し,宿便性穿孔を起こすことが知られている。これらの薬剤は,CTでは高吸収の大腸内容として認められる。

6 腸管気腫
▶薬剤性の腸管気腫には,良性の病態と致死的な病態があり,造影CTによる腸管虚血や壊死の評価が必須であるが,画像所見のみならず総合的に評価する。

7 薬剤による高吸収の胃内容物
▶経口的に摂取される薬剤は,CTにてしばしば高吸収の胃内容物として同定される。多くは病的意義に乏しいが,錠剤の形態を残した薬剤が異物と誤認されたり,溶解した薬剤が出血との鑑別を要したりすることがある。
▶意識障害の診断において,過剰摂取された薬剤を反映した胃内の高吸収域から,急性薬物中毒を示唆できることがある。

8 ヨード造影剤の異所性排泄や遅延造影
▶ヨード造影剤の異所性排泄は,経静脈投与された造影剤の胆道排泄,経口投与されたヨード造影剤の尿路排泄が知られている。
▶造影CT後に,胸水や腹水が遅延造影されて,血性胸水や血性腹水のように見えることがある。

この記事はWebコンテンツとして単独でも販売しています

プレミアム会員向けコンテンツです(最新の記事のみ無料会員も閲覧可)
→ログインした状態で続きを読む

関連記事・論文

もっと見る

関連書籍

もっと見る

関連求人情報

公立小浜温泉病院

勤務形態: 常勤
募集科目: 消化器内科 2名、呼吸器内科・循環器内科・腎臓内科(泌尿器科)・消化器外科 各1名
勤務地: 長崎県雲仙市

公立小浜温泉病院は、国より移譲を受けて、雲仙市と南島原市で組織する雲仙・南島原保健組合(一部事務組合)が開設する公設民営病院です。
現在、指定管理者制度により医療法人社団 苑田会様へ病院の管理運営を行っていただいております。
2020年3月に新築移転し、2021年4月に病院名を公立新小浜病院から「公立小浜温泉病院」に変更しました。
6階建で波穏やかな橘湾の眺望を望むデイルームを配置し、夕日が橘湾に沈む様子はすばらしいロケーションとなっております。

当病院は島原半島の二次救急医療中核病院として地域医療を支える充実した病院を目指し、BCR等手術室の整備を行いました。医療から介護までの医療設備等環境は整いました。
2022年4月1日より脳神経外科及び一般外科医の先生に常勤医師として勤務していただくことになりました。消化器内科医、呼吸器内科医、循環器内科医及び外科部門で消化器外科医、整形外科医の先生に常勤医師として勤務していただき地域に信頼される病院を目指し歩んでいただける先生をお待ちしております。
又、地域から強い要望がありました透析業務を2020年4月から開始いたしました。透析数25床の能力を有しています。15床から開始いたしましたが、近隣から増床の要望がありお応えしたいと考えますが、そのためには腎臓内科(泌尿器科)医の先生の勤務が必要不可欠です。お待ちいたしております。

●人口(島原半島二次医療圏の雲仙市、南島原市、島原市):126,764人(令和2年国勢調査)
今後はさらに、少子高齢化に対応した訪問看護、訪問介護、訪問診療体制が求められています。又、地域の特色を生かした温泉療法(古くから湯治場として有名で、泉質は塩泉で温泉熱量は日本一)を取り入れてリハビリ療法を充実させた病院を構築していきたいと考えています。

もっと見る

関連物件情報

もっと見る

page top