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びまん性汎細気管支炎[私の治療]

No.5136 (2022年10月01日発行) P.38

松永和人 (山口大学大学院医学系研究科呼吸器・感染症内科学講座教授)

登録日: 2022-09-29

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  • びまん性汎細気管支炎(diffuse panbronchiolitis:DPB)は,両肺にびまん性に存在する呼吸細気管支領域の慢性炎症を特徴とする慢性気道感染症であり,閉塞性換気障害をきたす。わが国の本間,山中らによって1969年に提唱された疾患で,欧米には少なく日本をはじめとした東アジアに多い。これには遺伝的素因の関与が考えられており,わが国ではHLA-B54が陽性である患者が多いことが報告されている。以前は予後不良な疾患であったが,工藤らによりマクロライド少量長期投与の有効性が報告され,5年生存率6~7割から9割以上へと予後が大きく改善している。

    ▶診断のポイント

    慢性的な咳嗽,膿性痰,労作時呼吸困難などの呼吸器症状に加え,高率に合併する慢性副鼻腔炎,特徴的な画像所見(胸部X線写真における両中~下肺野にかけてのびまん性粒状影,胸部CTにおける小葉中心性粒状影や分岐線状影,進行例では気管支拡張)から診断する。ほかに参考となる所見として,胸部聴診での断続性ラ音,呼吸機能検査における閉塞性換気障害,血液検査所見での寒冷凝集価の上昇(64倍以上),IgAの上昇,などがある。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    DPBの治療はマクロライド少量長期投与が基本であり,抗菌活性以外の好中球集積抑制や粘液分泌抑制などが作用機序として考えられている。診断後は速やかに治療を開始し,多くの場合は治療開始後3カ月以内に症状が改善,画像所見や呼吸機能なども改善がみられてくる。症状や検査所見が安定すれば治療を継続して2年で終了し,症状が続く場合は治療を継続する。治療終了後に再燃した場合には治療を再開する。

    エリスロマイシンを基本とするが,相互作用や副作用などで使用できない場合,クラリスロマイシンやロキシスロマイシンに変更する。ただし,近年増加傾向である肺非結核性抗酸菌(NTM)症ではクラリスロマイシンがkey drugで,その単剤使用で耐性化が誘導されることから,使用時にはNTM症の合併がないか,注意が必要である。また,それら14員環マクロライド系の効果が乏しい場合は,15員環マクロライド系のアジスロマイシンへの変更を考慮してもよい。なお,16員環マクロライド系は無効である。

    細菌感染による増悪時には肺炎球菌やインフルエンザ菌などをカバーした抗菌薬治療を行う。痰から緑膿菌が検出されている場合や抗菌薬治療を繰り返している場合には,緑膿菌のカバーを含めた抗菌薬の選択を検討するが,痰から緑膿菌が検出されていても増悪に関与していないこともあるので,安易にニューキノロン系の抗菌薬を選択しないことも重要である。

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