慢性副腎皮質機能低下症の主な病因として,後天性の原発性成因によるアジソン病があり,副腎皮質ステロイド合成酵素欠損症による先天性副腎皮質過形成症・先天性副腎低形成・副腎皮質刺激ホルモン(adrenocorticotropic hormone:ACTH)不応症などとは独立した疾患単位として扱われることもある。アジソン病の病因は,①感染性,②特発性,③その他,の原因に分類される。そのほかの慢性副腎不全の原因としては,がんの副腎転移,副腎白質ジストロフィー,悪性リンパ腫,副腎出血,副腎手術後,サルコイドーシス,アミロイドーシス,放射線照射,薬剤性などがある。一般的に発症は緩徐で診断が遅れやすいため,ストレスを契機とした副腎クリーゼで診断されることも多い。
①原発性副腎不全と続発性副腎不全に共通するコルチゾール欠乏症状:易疲労感,脱力感,食欲不振,嘔気・嘔吐,腹痛,倦怠感,無気力感,不安,性格変化,意識障害,昏睡,血圧低下,脱水,発熱,関節痛,低血糖症状
②原発性副腎不全と続発性副腎不全に共通する副腎アンドロゲン欠乏症状:女性の腋毛・恥毛の脱落
③原発性副腎不全のみにみられる症状:色素沈着
低血糖,低ナトリウム血症,高カリウム血症,正球性正色素性貧血,血中総コレステロール値低値,末梢好酸球増多,末梢血の相対的好中球減少,リンパ球増多
非ストレス刺激下で,早朝コルチゾール値が18μg/dL以上であれば副腎不全は否定的であり,4μg/dL未満であれば副腎不全の可能性が高い1)。迅速ACTH負荷試験〔コートロシン®(テトラコサクチド)250μg(静注)〕で負荷後30~60分のコルチゾール値の頂値が18μg/dL未満で,副腎不全の可能性を疑う。ただし,原発性に比較して続発性副腎不全の感度は低い(95% vs. 57%)。
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