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第1章 産業医入門  C 長時間労働者への面接指導

登録日:
2018-10-04
最終更新日:
2018-10-12

1. 面接の対象・目的

面接の対象者

改正労働安全衛生法(2019年4月施行)による面接指導の対象者は下表の通りです。


前述のように、定期健康診断で「要就業制限」の対象となった労働者については、時間外労働をさせて良いのか、医学的判断が必要です。
また、改正労働安全衛生規則(2017年6月施行)に基づき、事業者は残業時間が月100時間を超えた労働者の氏名と労働時間を産業医に通知した場合、産業医の職場巡視頻度は、それまでの月一度から2ヵ月に一度へと緩和して良いことになっていましたが、この100時間も80時間へと厳格化されました。事業所の負うリスクが産業医へ転嫁される恐れがあるため、氏名を通知された労働者に対しては産業医との面接を設定するよう、企業側に事前に指示しておきましょう。

面接の目的

長時間、時間外労働に従事せざるを得ず、蓄積した疲労が限界に到達すると、以下の疾病にかかりやすくなります。これらの予兆を見逃さず、早期発見・早期治療につなげるために医師に面接をさせることになっています。

1)脳・心臓疾患
脳血管疾患:脳出血、くも膜下出血、脳梗塞、高血圧性脳症など
虚血性心疾患等:心筋梗塞、狭心症、心停止(突然死を含む)、解離性大動脈瘤など
これらの前駆疾患である心電図異常、高血圧、糖尿病、高脂血症に関して「要休職」や「要就労制限」の判断(第1章 B-1)をし、対処につなげましょう。

2)メンタルヘルス不調:うつ病を筆頭としたストレス関連疾患(自殺を含む)

上記の対象疾患のうち、特に“過労死”や“過労自殺”の未然防止、早期発見・対処が第一の目的です。三重大学の笽島(そうけじま)茂教授が富山県県庁職員を対象に、心筋梗塞死の発生と労働時間の関連について行った症例対照研究があります11。この研究成果は1998年に公表され、時間外労働時間の延伸に比例して心筋梗塞による死亡リスクが増加していたことから、時間外労働を余儀なくされる労働者の救済を主眼として、面接指導制度が法制化されました。
この制度が導入されたのは平成17年です。その後、管理職に対する教育や啓発が進み、体調が悪い従業員に対し無理に仕事を続けさせることは少なくなりました。病気をおしてでも仕事をすることが「根性」を示すとされた時代は、過去のものとなりました。風邪にかかった従業員がいたら、無理せず早く帰宅して治してもらう、という企業の姿勢が浸透しつつあります。
そして今日、時間外労働時間が月80時間を超えた従業員が不幸にして過労死したとします。遺族が訴訟を起こせば、そのような労働に従事させた企業は裁判に負けるでしょう。企業には本来、労働時間管理や健康管理をしなければならない「安全配慮義務」が課されているからです。

しかしながら、いまだに「安全と弁当は従業員持ち」といったような実態が少なからずみられます。さらに悪いことに、企業の求人状況をみると、人手不足の傾向が顕著に現れています。厚生労働省が毎月公表している「一般職業紹介状況」によると、平成30年7月の有効求人倍率は1.63倍、新規求人倍率も2.42倍と、採用をかけても人材を確保できない状況が続いています。人手不足から長時間労働が避けられない状況に置かれている職場が数多くあります。

本書を手に取られた先生方こそ、地上に降りた最後の「エンジェル」として、時間外労働を強いられている労働者の中から、心身の不調をおして働いている方々を見つけ出し、救済していただきたいと願っています。

2. 面接の進め方

長時間労働者への面接指導について、過重労働対策等のための面接指導マニュアル・テキスト等作成委員会による「マニュアル(医師用)-チェックリストの使い方」(平成20年8月)をもとに、筆者が実践している方法を記載します。

面接の方法

30ページで述べたカウンセリングの基本技法を使いながら、労働者の勤務の状況、疲労の蓄積の状況、その他心身の状況について確認していきましょう。
面接時には、積極的傾聴法にてラポールを形成するとともに、可能な範囲で労働者の相談にのり、医学的に評価した結果をもとに必要な指導内容を具体的に助言・指示します。
面接指導は、慣れないうちは生活習慣の改善指導・助言と、治療が必要と考えられる場合に専門医療機関へ受診するよう勧奨することを心がけましょう。慣れてくるまでは、傷病名の鑑別や精神療法までは担う必要はありません。したがって、当初の支援は、必要に応じた紹介状発行までで十分です
なお、受診勧奨時には、対象者が受診の必要性を十分に理解できるよう、対象者に合わせた言葉使いが重要です。

個人情報の取り扱い

個人情報の取り扱いについては慎重に対応する必要があります。統合失調症をわずらう家族がいるとか、妻がうつ病でひきこもりがちといったプライベートな情報を面談対象者が話した場合は、面接の最後に、当日聴取した内容のうち企業に報告しても構わないことと、そうではないことを確認すべきです。
本人が企業への報告を拒否した内容でも、本人の安全や健康を確保するために不可欠であると考えられる場合があります(例:病気の症状が出ているのに無理に勤務を続けようとする、事故隠しなど)。この場合は、企業が適切に対応できるように、かつ本人の意向に配慮して、「重度の疲労蓄積状況」のように病状ではなく体調を伝えるなどの工夫をして報告します。


3. 人事・労務担当者からの情報収集

あらかじめ、面接対象となっている従業員について、少なくとも前月の、場合によってはそれ以前からの情報を集めておいてもらいます。具体的には以下の基礎資料を集めます。

① 事業場で適用されている労働時間、月の時間外・休日労働時間
② 労働日数
③ 業務内容:業務の具体的内容、地位、責任の程度(例:精神的緊張を強いられる、突発的対応案件が多い、待機時間が⻑い)など
④ 定期健康診断結果
⑤ 過去の面接指導結果と対処

出張が続いている場合など、事前に情報を集めてもらうことは難しいため、面接時になってはじめて本人から聴取せざるを得ない場合もあります。
時間的余裕があれば、以上の情報をもとに、面接に臨む方はどんな日常生活を送っているのか、下調べをしておくと良いでしょう。

企業側からの情報収集に際して、筆者は書式⑧のような調査票を使っています。

書式⑧  ダウンロード方法は読者特典ページをご覧ください


4. 業務の過重性・ストレスの評価

「脳・心臓疾患の認定基準に関する専門検討会報告書」(平成13年)によると、仕事の過重性・ストレスを感じる負荷要因として、労働時間以外に表①に示す要因があるとされています。また、日常的に精神的緊張を伴う業務として、表②のような業務が挙げられています(それぞれ筆者改変)。


5. 疲労蓄積度チェックリスト

既往歴・業務歴の調査

筆者は、既往歴および業務歴に関する調査票(書式⑨)を作成し、事前に記載してきてもらっています。

書式⑨  ダウンロード方法は読者特典ページをご覧ください

疲労蓄積度の自己診断

長時間の時間外勤務に従事する労働者において、精神的な疲労が蓄積していないかを判別する尺度が労働基準局長通達により示されています (平成18年3月17日:基発第0317008号)。それを「疲労蓄積度自己診断チェックリスト」(書式⑩ 以下、疲労蓄積度チェックリスト)といいます。

書式  ダウンロード方法は読者特典ページをご覧ください


「疲労蓄積度チェックリスト」では、疲労の蓄積度を、①自覚症状(ストレス反応と疲労)、② 勤務の状況(労働負荷要因)、の2つの面から評価しています。企業側から提示された勤務状況を踏まえ、より詳細な人間関係や業務内容と、それらに対する当人の気持ちを確認するために活用しましょう。

「疲労蓄積度チェックリスト」の判定結果が2〜7点の人は疲労の蓄積の可能性があり、特に6点以上の人との面接時には、疲労の蓄積が強いと考えられるため、慎重な対応が求められます。

筆者は、質問項目をより簡略化した簡易版のチェックシート(書式⑪)を作成し、契約先に活用してもらっています。

書式  ダウンロード方法は読者特典ページをご覧ください



6. 面談時に着目すべきこと

メンタル失調の有無を確認する

筆者は、A4用紙の表裏におさまるように問診表(書式⑫)を作成し、面談時に使っています。

書式  ダウンロード方法は読者特典ページをご覧ください


この問診票について説明します。

質問1の①から⑩までは、普通はNOの回答です。いずれかがYESであれば、医療の対象とすべきメンタル失調の有無を面談で確認します
例えば、
 ①または②があれば抑うつ状態
 ③は気分変調性障害
 ④は希死念慮
 ⑤または⑥は躁状態
 ⑦または⑧は不安発作
 ⑨は心的外傷後障害
 ⑩は社会不安障害があるのではないかと考えます。それぞれの詳細は第2章で説明します。

質問6はHolmes and Raheのstress scaleを筆者が独自に翻訳したものです。年間の合計が150を超えるとメンタル失調のリスクが増加し始めます。さらに300点を超えるとメンタル疾患になってもおかしくありません。ただ、過小にしか選択しない人が多いので、面談時によく聴いて算出しなおします。

身体化を見逃さない

ストレスによる負担が、心の病気ではなく、高血圧や不整脈のように健康診断で把握可能な体調の変化として現れることがあります。これを「身体化」といいます。面談時には、定期健診の結果やこれまでの休職歴も確認できるように準備してもらっておくことが大切です。


例えば、頭痛は高ストレス下で誰しも経験することの多い身体化の例です。腰痛、肩こり、体の節ぶしの痛み、食欲低下や心窩部痛、下痢や便秘、いわゆる冷や汗、息苦しさも身体化の例として挙げられます。教科書的には、甲状腺機能低下や副腎皮質機能障害、膠原病、がん、脳梗塞なども抑うつとの関係が言われています。

実際によく目にするのは、偏食が背景にある鉄欠乏性貧血です。赤血球数と血色素量は定期健診の法定項目にあることから、MCHを計算することで検討が可能です。ただし、40歳未満で35歳健診の対象者以外は健診機関や企業が勝手に省略している場合があります。眼瞼結膜や爪甲を確認することで補完しましょう。実際に、難治性うつとされていた方がスプーン爪を示していたことから、精査してもらったところ鉄欠乏性貧血が背景病理にあった経験があります。

また、月あたりの残業が100時間を超す過重労働を強いられ続けたシステムエンジニアの実像報告13から、以下の視点も忘れてはなりません。
過重労働に従事する中壮年男性は、夜遅くまでの労働が食生活を乱し、メタボリック症候群を抱えて体調が悪化しがちです。それだけではなく、過重労働の長期化により、異性と知り合うチャンスすら確保できず、結果として未婚という生活様式以外の選択がなされていないとの実態報告です。定期健康診断結果や保健指導の効果を把握することはもちろん、より良い人生のためのアドバイスも提供したいものです。


7. うつ病の一次スクリーニング

長時間労働者の中には、精神疾患に罹っている方が含まれている場合があります。そこで『長時間労働者への面接指導マニュアル(医師用)』では、抑うつ症状に関する質問(書式⑬)を参考に、構造化面接を行うことが推奨されています。

書式  ダウンロード方法は読者特典ページをご覧ください


そこでまず、このマニュアルに基づいた方法を紹介します。

はじめに主要な2項目(A1A2)の質問を行います。いずれか、あるいは両方が「はい」の場合のみ、さらに睡眠(A3)、自尊心(A4)、集中力(A5)に関する質問を行います。
5つの質問中、「はい」の項目が3つ以上ある場合に、“うつ病の疑いあり”と判断します。厳密には「過去2週間以上」が必要ですが、症状が出始めたのが直近2週間未満の場合には2週間未満でもあてはまると考えましょう。

“うつ病の疑いあり”と判断したら、()症状のために仕事や生活上の支障がかなりあるか、()死にたい気持ちが持続しているか、を確認します。
いずれか、あるいは両方が“はい”の場合にはうつ病に罹患している可能性が高いことから、専門医療機関への受診が必要と判断します。

しかし、これだけで済むほど現実は簡単ではありません。上記『マニュアル』は作成されてから改訂がなされていないので、補足を加えましょう。
うつ病の可能性が高いかどうかは、次のようなことを判断材料にします。

・憂うつの程度がひどくなっている
・気持ちに空虚感が認められる
・好きな趣味などもできない

このようなとき、人は現実を正確に把握できず、説得不可能な心理状態にあります。追い詰められていると思っていたり、「後がない」という考えにとらわれています。例えば、失敗が続いたわけでもないのに「大損害を与えた」と述べたり、最終的には社長が責任をとるのに、「自分の責任です。死んでお詫びをしなければ」と命がけで責任をとらなければならないといったような話をします。


8. うつ病を把握するための質問

うつ病に伴ってみられる症状と、それを把握するための質問例を紹介します。

抑うつ気分

「気持ちが沈み込んだり、滅入ったり、憂うつになったりすることがありますか」
「悲しくなったり、落ち込んだりすることがありますか」
「気がつくと、涙が出ていること、ありますか」

うつ病の人は心のガソリンが枯渇しているため、気持ちが沈み込み、「憂うつだ」「悲しい」「夢や希望が持てない」「落ち込んでいる」と思い悩んでいます。
人によってはこれらの気持ちを表立って口にしないこともありますが、視線を合わせなかったり、表情が暗かったり、憔悴した雰囲気、場合によっては何日もシャワーを浴びていないような不潔感から気づかれることもあります。

興味や喜びの喪失

「仕事や趣味などに、興味が感じられますか」
「好きだったことを、今でも楽しくできていますか」

うつ病の人は、好きな趣味でさえも面白く感じることがなくなり、何かをしようという気持ちさえ起きなくなってしまいます。それは家族との団らんもです。性的な関心や欲求も著しく低下します。内向きになり、自分の部屋に閉じこもりがちになります。

食欲の減退または増加

「いつもより食欲が落ちていますか/増していませんか」
「ダイエットしていないのに、体重が減っていますか/食欲が増進して体重が増えていませんか」

一般にうつ病では食欲が低下します。「何を食べても味が感じられず、砂をかんでいるようだ」とか、「料理した妻に悪いので、無理に口に押し込んでいる」という訴えが聞かれます。
逆に食欲が亢進する場合もあります。いわゆるヤケ食いが続くような状況です。

睡眠障害(不眠または睡眠過多)

「寝つきは良いでしょうか」(入眠困難)
「夜中に何度も目が覚めることがありますか」(中途覚醒)
「起きる必要がないのに、異常に朝早く目がさめたりしますか」(早朝覚醒)
「ぐっすり眠った気がしなかったり、日中に眠気が出たりしますか」(熟睡不良)

うつ病の症状を構成する症状の1つに睡眠障害があります。よく眠れないために気力回復が遅れ、自責の念が強まり、症状を増悪させてしまいます。さらに自律神経の失調を伴うと、概日リズムがずれ、日中に眠気が出てしまいます。

精神運動障害(強い焦燥感や運動の制止)

「話し方や動作が普段より遅くなっていて、それを人から指摘されることがありますか」
「じっとしていられず動き回ったり、じっと座っていられなかったりすることが多くなっていますか」

心のガソリンが枯渇しているため、身体の動きが遅くなったり、口数が少なくなったり、か細い声でしか話せなくなるなどの「精神運動制止」という症状を呈しやすくなります。逆に、そわそわと落ち着きがなくなる「焦燥感」や、イライラが昂じて怒りやすくなる「易怒性」を示すこともあります。
この焦燥感は、回復のバロメーターとしても使われます。ただ、注意しなければならないのは、本人が「早く仕事に復帰したい」と申し出てきたとき、その本音(収入が途絶えた。このままでは一家離散するしかない!)までは話してくれないということです。
精神科医は、患者の気持ちを優先する傾向があります(または、多忙のため患者の本音に寄り添う時間が確保できないのかもしれません)。そのため、往々にして復帰には時期尚早なのに、希望する患者に復帰可能との診断書を発行してしまいます。
当然、時期尚早なので、産業医は復帰面談後「復帰不可」と止めることになります。すると、「主治医は大丈夫と言っているのに、専門医でもない産業医が覆すのはおかしい!」と怒り出す方がいらっしゃいます。このような怒りは衝動的な自殺につながることがあります。
そのような気苦労をしないためにも、第2章で述べる「リワーク」のプロセスを段階的に踏んで復職を目指すよう、誘導しましょう。

易疲労感・気力低下

「いつもより疲れやすくなっているとか、気力が低下していると感じますか」

心のガソリンが枯渇していると身体活動をしていないにもかかわらず、ひどく疲れたり、身体が重く感じたりします。
「会社に行かなければ」と焦る気持ちはあるのですが、実際に行こうとすると身体が言うことをきかず、さらに焦燥感が募ってしまいます。

強い罪悪感

「自分は価値のない人間だと感じたり、悪いことをしたと後ろめたく感じることがありますか」

悪いことをしていないのに、会社に迷惑をかけたという「罪業妄想」、失敗したせいで会社を解雇され、家族は路頭に迷って一家離散だという「貧困妄想」、頭が痛いのは脳腫瘍のせいだと思い込む「心気妄想」などの症状が出ます。
些細なことをくよくよと考え込み、何度も同じことを同僚に確認することから、気付かれる場合があります。円高のせいで競合する韓国企業に競り負けたことを、自分の努力が足りないせいだと思い込んだ例もありました。

思考力・集中力の低下

「物事に集中し辛くなっていますか」
「普段より考えるのに時間がかかったり、考えがまとまらなくなっていませんか」
「普段なら問題なく決められることが、なかなか決められなくなっていますか」

集中力が落ちて注意が散漫になり、些細なことまであれこれ考え、決断に時間がかかるようになります。学生の場合には成績が落ちます。中高年の場合には認知症と勘違いされることもあります。
なお、高齢者がうつ病にかかると、休養のために刺激から遠ざかることが認知症を進行させてしまうので厄介です。

希死念慮

「死んでしまったら楽だろうな、と思ったりしますか」
「死ぬ方法について考えますか」
「遺書を書きましたか」
「死ぬことばかり考えていますか」

うつ病の症状が重いときには、死のうと思ってもそれを実行に移すだけの元気がありません。しかし、症状が改善してくると、希死念慮を実行に移すだけのエネルギーが回復しているので、回復期に自殺が増えてしまいます
症状が改善してくると、外見上も回復したように見えてしまうため、支援が手薄になりがちです。ところが、当人は最悪期の辛さから脱却できているわけではなく、回復への自覚も自信も乏しい場合が多いのです。
このような周囲の見方と当人の状況との食い違いが認容できなくなると、“誰も自分のことを理解してくれない”と絶望感を感じ、死を選択してしまいます。


9. 受診の勧め方

以上の詳細な問診から、うつ病に罹っていると判断できる場合には、「病気だから医療機関の受診が必要」と受診を勧めます。
「病人扱いされた」と反発を受けることがありますが、その場合は積極的傾聴で言い分をよく聴くことで、治療への道に乗せることがかないます。

受診勧奨

「心配ですね。一度、信頼している専門医を紹介しますので診てもらいましょう」
「ぐっすり眠ることができるようになるだけでも助かりますよね。睡眠外来に行ってみませんか」
「疲れやすいのは身体の不調のサインです。一度、専門医に診てもらいましょう」
「ストレスが溜まると、いよいよ体調を崩しかねません。大事にならない今のうちに受診しておきましょう」
「プロジェクトがうまく回らないのはあなたのせいではなく、病気のせいであればもったいないと思いませんか。病気のせいであれば治療したら治り、プロジェクトもうまく回るようになりますよ」

労働者が拒む場合

「大丈夫だということがわかったほうが、安心感が違いますよ」
「こころはともあれ、定期健診に影響が出ているので、そちらの面を主に診てもらいましょう」
「診断するのは医者の仕事です。医者でないのに自分で診断して、もし誤診だったら大変です」
「私も本当は○○さんと同じように、何でもないのが一番だと思っています。でも、私は専門医ではないので、“大丈夫です”と言い切れないのです」
 
紹介状の交付も検討しましょう。筆者は、本人の前で候補医院に電話をし、予約を取り付けたことがあります。

メンタル失調者の割合

時間外勤務に従事している労働者のうち、メンタル失調になる人の割合を把握しておくと、一定の目安になります。
2010年頃の日立製作所での調査結果15があります。それによると、1万人の時間外労働者に医師による面接制度を実施したところ、1人の割合で精神疾患で苦しんでいる労働者を把握できたそうです。
筆者は、月に100時間を超える時間外勤務を社員の5%以上に強いるような企業での産業医経験があります。そこでの経験からすると、以下のような“リトマス試験紙”ができるかもしれません。


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