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急性リンパ芽球性白血病治療の進歩 【blinatumomab,inotuzumab ozogamicinの投与により全生存期間が改善】

No.4874 (2017年09月23日発行) P.51

秋月渓一 (宮崎大学内科学講座消化器血液学)

下田和哉 (宮崎大学内科学講座消化器血液学教授)

登録日: 2017-09-22

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がんの治療において,腫瘍化に大きな影響を与えるドライバー変異が存在する場合,それに対する阻害薬は治療成績を向上させることが期待される。慢性骨髄性白血病の原因遺伝子であるBCR-ABLを有する急性リンパ芽球性白血病(ALL)はフィラデルフィア(Ph)染色体陽性ALLと呼ばれ,ABL阻害薬を併用した化学療法による予後改善がみられているが,Ph染色体が検出されない「Ph染色体陰性ALL」に対しては,従来通りの多剤併用化学療法が標準治療である。

blinatumomabはCD3とCD19を認識するバイスペシフィック抗体であり,CD3陽性Tリンパ球がCD19陽性細胞を認識して排除することを可能にする。再発難治Ph染色体陰性B細胞性ALLを対象とした,多剤併用化学療法と比較する第3相試験において,blinatumomabによる全生存期間の延長効果が報告された1)。これ以外にも,抗CD22抗体にカリキアマイシンを結合させたinotuzumab ozogamicinと多剤併用化学療法とを比較する第3相試験の結果も報告されており,Ph染色体の有無にかかわらず,inotuzumab ozogamicinは再発難治ALL患者の全生存期間を改善させる2)。Ph染色体陰性ALLに対する有力な治療薬の開発が進んでいる。

【文献】

1) Kantarjian H, et al:N Engl J Med. 2017;376(9): 836-47.

2) Kantarjian HM, et al:N Engl J Med. 2016;375(8): 740-53.

【解説】

秋月渓一*1,下田和哉*2  *1宮崎大学内科学講座消化器血液学 *2同教授

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