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第3世代チロシンキナーゼ阻害薬による慢性骨髄性白血病の治療の進歩【CMLは,薬物治療による長期予後がよりいっそう期待できる腫瘍となってきた】

No.4865 (2017年07月22日発行) P.60

日髙智徳 (宮崎大学内科学講座消化器血液学講師)

下田和哉 (宮崎大学内科学講座消化器血液学教授)

登録日: 2017-07-18

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染色体転座により形成されるフィラデルフィア染色体由来のBCR-ABLチロシンキナーゼは強力に恒常的な細胞増殖を誘導し,慢性骨髄性白血病(CML)腫瘍化の原因となっている。CMLは無治療の場合,約3~5年の慢性期から移行期を経て,急性転化期へと進行する,予後不良疾患である。チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)であるイマチニブ,それに続く第2世代TKIにより,10年生存率は80~90%と,慢性期CMLは薬剤によりコントロール可能な腫瘍となってきた1)

しかし,BCR-ABLに点突然変異が生じるとTKIに耐性となる可能性がある。そのひとつであるT315I変異は耐性例の20%程度に出現し,イマチニブ,第2世代TKIが無効であるため,造血幹細胞移植が治療選択肢であった。第3世代TKIポナチニブは,T315I変異例にも有効であり,T315I変異を有するCMLを対象に行われた第2相試験では,末梢血白血球のうち腫瘍細胞が0.1%以下へと減少し,確実な病期進行の回避が期待できる分子生物学的大寛解が慢性期で56%,移行期で22%,急性転化期で21%に得られている2)

ポナチニブの登場により,CMLは薬物治療による長期予後の改善がよりいっそう期待できる腫瘍となってきた。

【文献】

1) Kalmanti L, et al:Leukemia. 2015;29(5):1123-32.

2) Cortes JE, et al:N Engl J Med. 2013;369(19): 1783-96.

【解説】

日髙智徳*1,下田和哉*2  *1宮崎大学内科学講座消化器血液学講師 *2同教授

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