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(総論)オープンデータ時代の医療統計活用[特集:医療統計 早わかり]

No.4736 (2015年01月31日発行) P.16

登録日: 2016-09-01

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  • 近年になって,夥しい統計表がネット上でExcelやcsvファイルで公開されるようになってきた。統計表はあくまで集計結果であって個票ではない。したがって限界もあるが,上手に活用すればデータベースを超えるデータウェアハウスとして活用できる。
    データベースとデータウェアハウスはどう違うのだろうか? 前者は「個」を検索するものだが,後者は集計された結果を検索するものである。電子カルテは「田中太郎」さんの検査結果や「山本花子」さんの画像を検索可能にしたデータベースであり,臨床医にとって不可欠の道具である。しかし医療統計を解析する上で,田中太郎さんや山本花子さんの個人情報を知る必要はない。5年間でメタボ有病率が最も減少した都道府県はどこか? スモーカーとノンスモーカーで医療費はどう違うか? はたまた新生児の出生時体重と死亡率はどう関係するか?分析で求められるのは,これらの集計結果のみである。
    だとしたら,個人単位のデータベースをあらかじめ集計して,必要とされる次元(たとえば都道府県,性・年齢階級,喫煙の有無,出生時体重など)ごとに集計表を作り,必要に応じて,たとえば埼玉県の喫煙者の50~54歳男性の医療費,出生時体重1500~1999グラムの男児の死亡数を迅速に抽出するほうがよい。このようなシステムは,個人を検索する「データベース」に対して「データウェアハウス」と呼ばれる。
    オープンデータとして提供される膨大な統計表は,データウェアハウスの格好の情報源となる。本特集では,容易に入手できる医療統計をデータウェアハウスとして活用する可能性をとり上げる。
    筆者は,国立保健医療科学院において厚生統計情報特論,レセプト健診データ分析法など,医療統計活用のための教育研修に長年取り組んできた。近年,提供されるデータが多くなっただけでなく,その内容や質も飛躍的に向上してきた。それだけに,必要なデータを検索し加工する技術がいっそう重要となっている。幸い,データ活用のために特別なソフトは必要なく,ExcelとAccessという誰のコンピュータにも入っているソフトでも十分可能である。それらのソフトを使いこなせば,どのようなデータからどのような事実を把握できるか,本特集を通じて理解して頂ければ幸いである。
    各種医療統計のデータ源を以下に紹介する。

    1. e-STAT

    e-Stat [http://www.e-stat.go.jp]とは,総務省統計局が運営する「政府統計の総合窓口」である。厚生労働省だけでなくあらゆる政府統計が集められており,フリーキーワードで検索できる。データ量は膨大であり,使いこなすにはちょっとした熟練が必要である。
    たとえば「社会医療診療行為別調査」というキーワードで検索すると,夥しい表の見出しとcsvファイルへのリンクが表示されるが,診療行為の最も詳細なデータが提供されている閲覧表第1~12表の見出しは,表1のようにちょっと見ただけではわかりにくい。しかし見出しをじっくり観察すると,体系立った表になっていることに気づく。さらに30もある表のうち基本となるのは青色で示した14表のみであって,ほかはそれらの基本表を合計したものであることがわかる。
    表1は3つの次元(病院と診療所という医療機関種類別,入院と入院外という診療種別,そして一般医療と後期医療という医療保険制度)からなっており,さらに病院は病床規模別,診療所は診療科目別という次元で作表されていることがわかれば,活用しやすくなる。

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