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「「臓器不全症」の終末期を議論しよう」[長尾和宏の町医者で行こう!!(69)]

No.4839 (2017年01月21日発行) P.20

長尾和宏 (長尾クリニック)

登録日: 2017-01-19

最終更新日: 2017-01-19

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  • 昨年もおかげさまで様々な講演会に呼んでいただき、診療の合間を縫って全国を巡った。最近はさまざまな医学会や医師会が主催する終末期医療関係のイベントに呼んでいただく機会も増えて嬉しい。やはり同業者との議論を重ねないと終末期の課題は前に進まないと感じるからである。なかでも第38回日本呼吸療法医学会、第4回Destination Therapy(DT)研究会、第45回埼玉透析医学会など臓器不全症に関わる医学会では、医学・医療の進歩とともに、大病院で複雑な医療行為に携わっておられる医師たちの苦悩を肌で感じることができた。

    私のクリニックでは、末期がんの方は約9割の確率で在宅看取りになる。がんにおいては終末期像が最も分かりやすく、緩和ケアの技術があれば在宅看取りは決して難しくはない。一方、老衰や認知症終末期の看取り率は約4割と、末期がんの約半分である。これは、在宅療養期間が年単位と長期間に及ぶため、介護者が疲弊し、施設や病院で最期を迎える人が増える結果である。

    臓器不全症の時代

    今回は、第三の病態とも言える「臓器不全症」の終末期像について考えてみたい。たとえば人工呼吸器や補助人工心臓(VAD)というデバイスの進歩が、皮肉にも呼吸不全や心不全の終末期をますます分かりにくくしているからだ。しかし、同じ医師として臓器不全症医療に挑む先生方の苦悩を共有していたい。専門家だけに負担させてはいけない。その終末期を巡る諸課題は、いまこそ医学界全体でも議論しないといけない。もちろん、意思決定の主体は患者さんや家族であるが、全体像を俯瞰し分かりやすく解説できるのは、医師という職種しかいないからだ。

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