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(1)長尾和宏の町医者で行こう!!(特別編) [特集:看取りのいま─多死社会の「自分らしい最期」を支える]

No.4728 (2014年12月06日発行) P.16

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-03-16

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  • 13万部のベストセラー「『平穏死』10の条件」(ブックマン社)の著者で、1995年に外来・在宅ミックス型診療所を兵庫県尼崎市に開設後、500人以上の「平穏死」に立ち会った看取りのエキスパート、長尾和宏先生に穏やかな看取りを行うノウハウを聞いた。

    まず強調したいのは、「看取り」は目的ではなく、あくまで結果であるということです。よい関係性を構築できれば、穏やかな看取りにたどり着きます。

    その上で、穏やかな看取りに必要な要素とは、①医師、②家族、③本人、④制度―の4つです。

    まず医師ですが、患者さんが比較的元気な頃から、終末期医療の方針について家族を含めて話し合いの機会を持つことが必要です。外来に通院している時から、病気の性質や進行、経過、そして家族の考え方や本人の死生観に寄り添いながら、話し合いを重ねる努力を行う。在宅医療に移行した段階で「『平穏死』10の条件」は渡しにくいですが、外来に通院している時なら渡しても嫌みにはなりません。

    緩和ケアの知識は必須です。緩和ケアは、すべての治療の土台にある。緩和ケアでは、患者・家族の苦痛を、①身体的痛み、②精神的痛み、③社会的痛み、④スピリチュアルペインの4つに分類しています。この中で、終末期の患者さんで最も優先すべきは、スピリチュアルペイン。病気が治らないことに対する魂の痛みをケアする修練が必要です。

    医師には、多職種連携を主導する役割もある。多職種チームには家族も入ります。在宅では医師が亡くなる場面に立ち会うことは稀で、実際の看取り人は家族や看護師、ヘルパーなどです。ですから、多職種チームのリーダーとなり、看取りの方針や患者さんの死生観を共有することが必要です。

    「遠くの子供」ともコミュニケーションを

    家族に関しては、“遠くの子供”に注意する。亡くなる直前に現れた子供がご本人とは異なる主張をされることがある。子供にしてみたら、離れて暮らす負い目から、最期は十分な医療を受けさせたいと考える。でも、日頃親とコミュニケーションが取れていないので、親の最期の希望を理解できない。

    ですから私は、患者さんが元気な時から、遠くのご家族とも連絡を取り、何でも相談してほしいと伝えています。同居していても日中不在の場合は夜に訪問し、ご家族と話す。盆と正月に遠方に暮らすご家族と直接話し合うこともあります。

    日本は医療において家族の権限が強大なので、日頃の家族とのコミュニケーションなしに、穏やかな在宅看取りは難しい。面倒でも必要な作業です。

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