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発作性夜間ヘモグロビン尿症の最近の診療:PNHタイプ血球,エクリズマブなど

No.4770 (2015年09月26日発行) P.55

後藤明彦 (順天堂大学血液内科先任准教授)

小松則夫 (順天堂大学血液内科主任教授)

登録日: 2015-09-26

最終更新日: 2016-10-26

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発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)は,造血幹細胞のPIG-A遺伝子の後天的変異によるGPIアンカー型蛋白欠損により,CD59などの補体制御因子が欠如し,補体依存性に慢性的溶血を生じるクローン性疾患である。血管内溶血で生じた遊離ヘモグロビンがNOを捕捉・消費することで,様々な臨床症状を生じることも明らかにされてきた。
病態解明を背景に2013年,わが国のPNH診断基準が改訂,直接クームス試験陰性の溶血性貧血で,GPIアンカー型膜蛋白の欠損血球(PNHタイプ血球)が検出されることが診断の要件となった。また,PNHタイプ赤血球が1%以上で血清LDH値が正常上限の1.5倍以上ならば臨床的PNHと診断してよい,とされた。すなわち,肉眼的ヘモグロビン尿などの症状がなくても,(1)骨髄不全,(2)原因不明の溶血,(3)原因不明の血栓症,などについては,PNH鑑別のため末梢血フローサイトメトリーによるPNHタイプ血球の検索が推奨される。
治療では,補体C5に対するヒト化モノクローナル抗体エクリズマブが終末補体活性をブロックすることで劇的に溶血を抑制し,生命予後と生活の質の改善をもたらすことが証明されている。PNH患者の妊娠についてもまだ少数ではあるが,エクリズマブ投与下で安全に管理できる可能性があり,2015年,特発性造血障害に関する調査研究班から「PNH妊娠の参照ガイド」が発表された。
エクリズマブは薬価がきわめて高額で導入のネックとなっていたが,2015年にPNHが指定難病に認定され負担が軽減されたことは喜ばしい。しかし,安易な導入は厳に慎むべきである。

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