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終末期がん患者と輸液療法

No.4763 (2015年08月08日発行) P.54

岡田 恵 (京都府立医科大学 疼痛・緩和医療学)

細川豊史 (京都府立医科大学 疼痛・緩和医療学教授)

登録日: 2015-08-08

最終更新日: 2016-10-26

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患者の苦痛が強く死期がせまっているが意思表示ができない場合,家族が「食べられないので点滴をしてほしい」と希望するときの適切なケアはあるだろうか。『終末期がん患者の輸液療法に関するガイドライン』(文献1)では,輸液が患者にとって不利益とならず,患者の意思表示もない場合には,輸液をする・しないという議論をするのではなく,家族の希望に従って輸液を行いながら,輸液による患者の負担をモニターし,かつ家族のケアを継続することを推奨している。
わが国では,病状が進行して経口摂取が困難になった場合に輸液を行うことが多い。しかし,がん終末期は悪液質,消化管閉塞・狭窄,消化管出血,脳腫瘍・脳転移による悪心・嘔吐,電解質異常,多臓器不全などの代謝異常をきたしており,輸液による浮腫,胸水,腹水,気道分泌の増加などが生じることが少なくない。その一方で,水分を補給しなければ命が短くなってしまう,輸液をしないと十分な栄養補給ができない,という家族の認識もある。
患者の意思表示がはっきりしない場合の倫理的判断は非常に困難であり,家族間でも文化や世代,価値観による考え方の相違によって様々な意見の不一致が起こりうる。医療者は,心理的苦痛に配慮しながら家族がとらえている輸液に対する意味合いを理解することが求められる。その上で,予後や病態,輸液による利益・不利益を含めた患者の現状を説明し,家族とともに継続的に検討する必要がある。

【文献】


1) 日本緩和医療学会緩和医療ガイドライン委員会, 編:終末期がん患者の輸液療法に関するガイドライン2013年版. 金原出版, 2013.

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