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経口鉄キレート剤の登場による骨髄異形成症候群の予後の改善

No.4715 (2014年09月06日発行) P.57

東原正明 (北里大学血液内科教)

登録日: 2014-09-06

最終更新日: 2016-10-26

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難治性貧血では,頻回の赤血球輸血が必要となる。赤血球製剤には1単位当たり100mgの鉄が含まれているが,排出は1日1mg程度に限られるため,頻回の輸血は鉄過剰症をきたす。わが国で使用可能な鉄キレート剤は,最近まで注射薬デフェロキサミン(DFO)のみであった。しかし,DFOは血中半減期がきわめて短い(5~10分)ため,十分な効果を得るには週5~7日,7~12時間の持続注射を続ける必要があり,きわめて用いにくい薬剤であった。厚生労働省の調査では,鉄過剰症患者のうちDFOを投与されていたのは43.2%で,DFO投与中で連日あるいは持続的に投与されていたのはわずか8.6%であった(文献1)。
わが国では2008年,鉄キレート剤デフェラシロクス(DFX)が使用可能となった。DFXは経口薬であり消化管からの吸収性も良く,血中半減期は約20時間と長く,1日1回の内服でキレート効果を発揮する。
骨髄異形成症候群(MDS)は,造血幹細胞のクローン性腫瘍化で高率に白血病への移行がみられる難治性疾患で,輸血依存になることも多い。しかし,鉄キレート療法の併用によって予後の改善がみられている(生存期間中央値=鉄キレート療法なし:54カ月,鉄キレート療法あり:124カ月)(文献2)。Neukirchenらの報告(文献3)でも49カ月vs. 74カ月であった。
わが国でもMDSの治療において,DFX併用が推奨されている。

【文献】


1) Takatoku M, et al:Eur J Haematol. 2007;78(6): 487-94.
2) Rose C, et al:Leuk Res. 2010;34(7):864-70.
3) Neukirchen J, et al:Leuk Res. 2012;36(8):1067-70.

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