株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

看取りに対応できる専門職を養成 在宅医らが団体立ち上げ【しらべてみました】

No.4760 (2015年07月18日発行) P.12

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-02-15

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • next
  • 今後死亡数の急増が見込まれる中、患者が「自分らしい最期」を迎えられるよう、在宅や高齢者施設での看取りに対応する人材を育てる試みが現場から始まっている。在宅医らが立ち上げた「エンドオブライフ・ケア協会」(Q1)は、「認定エンドオブ・ライフケア援助士」(Q2)の養成を今夏から開始する。6月28日に都内で開かれた協会の発足シンポジウムの模様を紹介する。

    同級生の葬式「50歳までに20人」

    協会理事の小野沢滋氏(北里大学トータルサポートセンター長)は、協会設立の背景である「2025年問題」について講演した。

    小野沢氏はまず、1950年前後に抗生物質の発売により生存率が急上昇したことを指摘。人の死が稀になった具体例として、小学校・中学校の同級生が約80人と仮定した場合、1899年生まれの人は50歳までに20人以上の葬式に出席するのに対し、2005年生まれの人は1、2回であることを挙げた。

    その上で、2025年に人口に占める要介護者の割合は地域ごとにまったく異なり、「ベッドタウンが最も問題が大きい」と指摘。「家族介護に頼らずに対応できるのか。今の在宅医療は家族がいないとなかなか成り立たない」と問題提起した。最も死亡する可能性が高い年齢である90歳頃の女性では、配偶者がいる割合は10%未満であることを紹介。「男性は妻が介護することが多い。今後増えるのは、配偶者のいない独居女性の要介護者であることが大きな問題だ」と強調した。

    ベッドタウンの高齢化を支える専門職はどうなっているのか。小野沢氏は人口72万人、要支援・要介護者2万5000人の神奈川県相模原市で、ホームヘルパーは735人、訪問看護師は122人に過ぎないことを説明。弱った人に専門職だけが対応するのではなく、周囲の人が支える必要があり、「社会的包摂を真剣に考えるべき」と訴えた。


    「人生は脱水への旅」

    「平穏死」をテーマに講演したのは、長尾和宏氏(尼崎市・長尾クリニック院長)。終末期の患者に延命治療を行わず、緩和ケアはきちんと施し、自然の経過に任せて看取る「平穏死」を提唱している。

    長尾氏は「平穏死は枯れて死ぬこと、延命死は溺れて死ぬこと」と説明。「枯れたほうが苦痛が少なく、長生きする。人生は脱水への旅で、終末期の脱水は友だ」と述べ、高齢者医療では是正すべき脱水とそうでない脱水を区別すべきと主張した。

    「脱水ならすぐ点滴」となる背景として、「待てないのが現代医療の特徴」と指摘。「終末期であれば、待ったほうが得をする場合が多い」と述べた。

    平穏死を妨げるこのほかの要因として、医療者・介護者が患者の心よりバイタルサインに注目する「バイタルサイン依存症」に陥っていることや、遠方の家族がしばしば本人の希望と異なる主張をする問題を列挙。「人生の最終章を本人は一人称、家族は二人称、医療者は三人称で考える。現在は本人と医療者の思いがあまりにも異なっている」として、「医療者・介護者はこれらを統合し、複眼的視点である『2.5人称』を持つべき」と訴えた。

    残り1,309文字あります

    会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する

  • next
  • 関連記事・論文

    もっと見る

    関連書籍

    関連求人情報

    関連物件情報

    もっと見る

    page top