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初発進行期濾胞性リンパ腫の治療方針

No.4725 (2014年11月15日発行) P.54

塚崎邦弘 (国立がん研究センター東病院血液腫瘍科科長)

登録日: 2014-11-15

最終更新日: 2016-10-18

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【Q】

初発進行期(ⅢまたはⅣ期)濾胞性リンパ腫(follicular lymphoma:FL)に対して,どのような場合に無治療経過観察とし,またどのようなときに治療を開始するのでしょうか。B症状など全身症状がある場合は治療を考慮しますが,無症状の場合の治療開始基準はありますか。また,治療法として,化学療法+リツキシマブやリツキシマブ単独療法などが考えられますが,どのようにして選択するのでしょうか。国立がん研究センター東病院・塚崎邦弘先生のご回答を。
【質問者】
村上博和:群馬大学大学院保健学研究科 生体情報検査科学講座教授

【A】

進行期のFLを含むいくつかの低悪性度の造血器腫瘍に対しては,watchful waiting(WW)が標準治療の1つとして位置づけられています。それは,病勢の進行が緩徐であること,一部の患者は5年あるいは10年以上にわたって無増悪で生存すること,副作用が軽微で根治できる治療法がないことが理由です。
2013年,日本血液学会によって造血器腫瘍のガイドライン(「造血器腫瘍診療ガイドライン2013年版」)が刊行されましたが,その中でWWが標準治療であるとされているものは,進行期のFLを含む低悪性度B細胞リンパ腫のほか,病初期の慢性リンパ性白血病,症候を伴わない多発性骨髄腫,くすぶり型または予後不良因子のない慢性型成人T細胞白血病・リンパ腫,造血不全・白血病化リスクの少ない骨髄異形成症候群,病初期のマントル細胞リンパ腫,慢性骨髄性白血病を除く病初期の骨髄増殖性腫瘍などがあります。
近年,欧米に引き続き日本でも増加傾向が著しいFLの中でも初発進行期の場合の治療方針は,低腫瘍量(low tumor burden)と高腫瘍量(high tumor burden)に層別化して考えることが一般的となっています。高腫瘍量の場合は,CHOP(cyclophosphamide, doxorubicin, vincristine, and prednisolone)などの化学療法と抗CD20抗体のリツキシマブの併用による全生存割合の改善が複数の第3相比較試験で明らかになったことから,化学療法+リツキシマブが標準療法です。低腫瘍量とは,リンパ腫に関連した症状がなく(無症候性),かつ近い将来症状を呈する可能性が乏しい場合であり,その代表的基準のGELF(Groupe d’Etude des Lymphomes Folliculaires)基準は下記の通りです。
病変の大きさ(7cm以上なし,かつ3cm以上3個以上なし),全身症状(B症状)なし,巨大脾腫(臍下)なし,胸腹水なし,局所(髄膜,尿管,眼窩,胃腸など)の圧迫症状のリスクなし,白血化(リンパ腫細胞>5000/mm3)なし,造血不全(Hb<10g/dL,好中球<1000,Plt<10万)なし,LDH/β2 ミクログロブリン正常。
2013年NCCN(National Comprehensive Cancer Network)ガイドラインおよび2011年ESMO(European Society for Medical Oncology)ガイドラインでは,低腫瘍量の場合は,WWが標準治療とされています。しかし,これらのガイドラインの根拠となった臨床試験は,CHOPなどの化学療法とリツキシマブの併用によるFLの全生存割合の改善が明らかになる以前の試験です。
最近,低腫瘍量FLを対象としたWWとリツキシマブ単独療法の第3相ランダム化比較試験の結果が明らかとなり,リツキシマブの早期介入により,化学療法を用いた治療開始までの期間が大幅に延長することが示されました。「造血器腫瘍診療ガイドライン2013年版」では,低腫瘍量のFLの場合はWWを考慮するべきとする一方で,リツキシマブ単独療法を考慮してもよいと示されています。ただ上記のように,WWで10年以上にわたって無増悪のFL患者もいることから,またリツキシマブは軽微ですが毒性を伴いかつ高額であることから,WWからリツキシマブ単独療法への移行をどのタイミングで行うかについて,低腫瘍量FLの標準治療法の開発が必要です。

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