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多発性骨髄腫における染色体異常の検出と薬剤選択【G分染法に加えて二重染色FISH法検査を行う】

No.4790 (2016年02月13日発行) P.57

飯田真介 (名古屋市立大学大学院医学研究科 血液・腫瘍内科学分野教授)

登録日: 2016-02-13

最終更新日: 2016-10-25

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【Q】

多発性骨髄腫においては様々な染色体異常が知られており,治療奏効性や予後との関連が報告されています。実臨床において,これらの異常をどのように検出し治療法の選択に生かすべきか,名古屋市立大学・飯田真介先生のご教示をお願いします。
【質問者】
畑 裕之:熊本大学大学院生命科学研究部 生体情報解析学分野教授

【A】

初発多発性骨髄腫患者の骨髄染色体検査では,通常のG分染法に加えて二重染色FISH(fluorescence in situ hybridization)法検査を行います。FISH法が必要な理由は,一般に骨髄腫細胞の増殖能が低いため分裂像が得られることが稀であるからです。
G分染法で13q-などの染色体異常を有する場合や,FISH法で検出されるt(4;14)(p16;q32)転座(IgH-FGFR3/MMSET)やt(14;16)(q32;q23)転座(IgH-c-MAF),そして17p欠失を有する骨髄腫は高リスク病型と呼ばれています。
t(4;14)陽性骨髄腫では,プロテアソーム阻害薬であるボルテゾミブの登場によって,以前に比べて大きく予後が改善しました。しかし,再発時には増殖速度が非常に速いのが特徴で,M蛋白再発を認めた時点ですぐに救援療法を開始する必要があります。FISH法のみで検出されるt(11;14)(q13;q32)転座(IgH-CCND1)を有する骨髄腫や染色体転座を認めない骨髄腫である標準リスク病型の場合は,M蛋白再発をきたしても経過をみながら救援療法の開始時期を決定すればよいことが多いのと対照的です。
またt(14;16)転座陽性骨髄腫は,ボルテゾミブや免疫調節薬の導入により予後は多少改善しましたが,初発時から治療抵抗性を示すことも多く,新規薬剤が奏効しても奏効期間がきわめて短いのが特徴であり,今後の新たな治療法の開発が必要な病型です。17p欠失は,すべての病型に二次的に現れる異常で,髄外腫瘤形成や中枢神経病変などを合併することが多いのが特徴です。最近,ボルテゾミブを含む併用療法やポマリドミドの有効性が報告されています。
一方,標準リスク病型では,自家造血幹細胞移植を併用した大量メルファラン療法や免疫調節薬の使用で長期の奏効期間が得られる場合が多いことが特徴です。
このように,初発時から患者ごとにどのような染色体異常が存在するのかを知っておくことは,初回治療法の決定のみならず再発時の治療開始時期や治療選択に重要な情報となります。

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