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多発性骨髄腫治療の薬剤選択【交差耐性と有害事象の2点が重要】

No.4788 (2016年01月30日発行) P.62

畑 裕之 (熊本大学大学院生命科学研究部 生体情報解析学分野教授)

登録日: 2016-01-30

最終更新日: 2016-10-25

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【Q】

多発性骨髄腫は難治性で予後不良な疾患ですが,近年登場した新規薬剤により,その予後は改善しつつあります。新規薬剤のうち免疫調節薬に分類される薬剤としてサリドマイド,レナリドミドがあり,近年,ポマリドミドも使用可能になっています。これらの薬剤は類似するものの,異なる性質を有するとされています。これらの薬剤の使いわけについてご教示下さい。熊本大学・畑 裕之先生のご回答をお願いします。
【質問者】
大間知 謙:東海大学医学部内科学系血液腫瘍リウマチ内科講師

【A】

サリドマイドは2008年に,レナリドミドは2010年に日本国内で承認されました。また,ポマリドミドは2015年3月に承認されました。いずれも初回治療としては認められていませんが,今後,欧米と同様にわが国でもサリドマイド,レナリドミドは初回治療での使用をめざす方向に動くと思われます。
いずれの薬剤もきわめて似た構造ですが,薬効や有害事象のプロファイルは異なっています。これら薬剤を使いわける上での重要な点は,交差耐性と有害事象の2点であろうと思います。
(1)交差耐性
私たちは既にサリドマイドとレナリドミドを使用した経験がありますが,サリドマイド耐性例にレナリドミドが奏効することはめずらしくありません。しかし,サリドマイド治療歴があるとレナリドミド治療での無増悪生存期間が劣る,との報告があります(文献1)。
では,レナリドミドとポマリドミドについてはどうでしょうか。マウスモデルでの検討では,IKZF3の抑制作用においてポマリドミドはレナリドミドよりも強力であり(文献2),IL2産生刺激作用もポマリドミドが強く(文献3),ポマリドミドはレナリドミドよりも強い薬効を有する可能性があります。一方,in vitroでの検討ではありますが,レナリドミドとポマリドミドは交差耐性がないと述べられています(文献4)。
実際に,ポマリドミドとデキサメタゾンを併用したMM03試験では,すべての症例がレナリドミドとボルテゾミブに耐性であったにもかかわらず,一定の奏効率が得られています(文献5)。
以上より,ポマリドミドはレナリドミド耐性例にも有効なサルベージ療法となりうると言えます。現時点では,ポマリドミドはレナリドミド,ボルテゾミブの両者の治療歴のある症例にのみ承認されています。
(2)有害事象
一方,有害事象については,サリドマイドは神経障害,眠気,便秘が問題となるものの,骨髄抑制は少ないと言えます。レナリドミド,ポマリドミドともに骨髄抑制は無視できない有害事象で,造血能の乏しい症例にはサリドマイドが使用しやすいとも考えられます。

【文献】


1) Wang M, et al:Blood. 2008;112(12):4445-51.
2) Kronke J, et al:Science. 2014;343(6168):301-5. (Fig. S4)
3) Corral LG, et al:J Immunol. 1999;163(1):380-6. (Fig. 3)
4) Ocio EM, et al:Leukemia. 2015;29(3):705-14.
5) San Miguel J, et al:Lancet Oncol. 2013;14(11):1055-66.

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