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慢性骨髄性白血病のチロシンキナーゼ阻害薬による治療

No.4777 (2015年11月14日発行) P.56

山本一仁 (愛知県がんセンター中央病院 臨床試験部部長/血液・細胞療法部)

登録日: 2015-11-14

最終更新日: 2016-10-18

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【Q】

慢性骨髄性白血病に対するチロシンキナーゼ阻害薬を用いた治療に関して,最近承認された薬剤およびイマチニブのジェネリック医薬品も含めた使いわけについてご教示下さい。愛知県がんセンター中央病院・山本一仁先生にお願いします。
【質問者】
城 達郎:日本赤十字社長崎原爆病院血液内科部長

【A】

慢性骨髄性白血病(chronic myeloid leukemia:CML)の治療成績はチロシンキナーゼ阻害薬(tyrosine kinase inhibitor:TKI)の登場により劇的に改善しました。初発慢性期CMLを対象に行われたIRIS(International Randomized study of Interferon versus ST1571)試験において,TKIであるイマチニブの,それまでの標準治療であった化学療法とインターフェロン併用療法に対する優位性が示され,さらにその後,第2世代TKIであるダサチニブ,ニロチニブ,ボスチニブが登場しました。ご質問はこれらの薬剤の使いわけをどのようにするかです。ここでは,慢性期CMLに絞って説明をします。
(1)初発慢性期CMLに使用できるTKI
初発慢性期CMLに対して使用できるTKIは,イマチニブ(ジェネリック医薬品も含む),ダサチニブ,ニロチニブです。イマチニブとダサチニブ(Dasatinib versus Imatinib Study in Treatment-Naive CML Patients:DASISION試験)またはニロチニブ(Evaluating Nilotinib Efficacy and Safety in Clinical Trials of Newly Diagnosed Ph+ CML Patients:ENESTnd試験)との比較試験の結果,第2世代TKIであるダサチニブ,ニロチニブは,より早くかつより深い奏効が得られることが示されました。一方,第2世代のダサチニブとニロチニブを比較した試験はありません。したがって,初発慢性期CMLに対しては,まずは第2世代TKIのいずれかの投与を考慮しますが,患者の状況によってはイマチニブも選択肢となります。
TKIで十分な効果を得るためには,患者が治療に前向きに取り組み,決められた用量を継続的に内服すること(アドヒアランス)が重要です。イマチニブ,ダサチニブ,ニロチニブには,それぞれ注意すべき副作用があり,また,内服方法も異なりますので,患者さんの社会的背景と合併症から発現リスクが高いと予想される副作用を避け,継続的に内服可能な薬剤を3剤のうちから選択します。
(2)注意すべき副作用
注意すべき,または頻度の高い副作用として,イマチニブ:浮腫,胃腸障害,筋肉痛など,ダサチニブ:胸水・心嚢液貯留,消化管出血,肺高血圧症,QT間隔延長など,ニロチニブ:皮疹,動静脈血栓塞栓症,ビリルビン値上昇,アミラーゼ上昇,リパーゼ上昇,QT間隔延長,血糖値上昇,などが挙げられます。
(3)薬剤の選択
初回治療に抵抗性または不耐容の場合には,別のTKIへの変更を考慮します。薬剤の選択は,初回治療と同様,患者の背景(合併症や社会的背景)を考慮するとともに,抵抗性の場合には,可能ならBCR-ABLの遺伝子変異を検索します。この場合,イマチニブ,ダサチニブ,ニロチニブに加えて,ボスチニブも選択肢となります。ボスチニブの主な副作用は,下痢と肝障害です。
イマチニブのジェネリック医薬品には,先発品と同等の効果があると考えられており,イマチニブを選択する場合には,患者と相談していずれを処方するかを決定します。

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