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悪性リンパ腫の日和見感染症予防対策

No.4756 (2015年06月20日発行) P.56

伊豆津宏二 (虎の門病院血液内科部長)

登録日: 2015-06-20

最終更新日: 2016-10-18

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【Q】

近年,抗体医薬以外にも新規プリンアナログやアルキル化薬などが登場したことで悪性リンパ腫の治療成績は向上しました。一方で肺結核,サイトメガロウイルス感染症,ニューモシスチス肺炎や帯状疱疹などの日和見感染症も増えたように感じます。
日和見感染症の発症リスクの高い患者さんをどのように選び出し,どのような予防策を講じるべきか,虎の門病院・伊豆津宏二先生にご教示をお願いします。
【質問者】
池添隆之:高知大学医学部血液・呼吸器内科学講師

【A】

悪性リンパ腫に対する化学療法のうち,フルダラビン,クラドリビンなどのプリンアナログやベンダムスチンを含む治療ではリンパ球減少症が目立ち,日和見感染症のリスクは高くなります。デキサメタゾンなどの高用量ステロイドを用いる治療も同様です。
これら治療を受ける患者さんには,ST(sulfamethoxazole─trimethoprim)合剤,アシクロビル(またはバラシクロビル)による予防を行っています。結核の既往のある患者さんではイソニアジドを用います。サイトメガロウイルス感染症の頻度はかなり低いので,血球減少などの副作用があるガンシクロビル(またはバルガンシクロビル)は予防的に用いません。
なお,化学療法に関連した日和見感染症が開始直後にみられることは少ないので,予防薬は2サイクル目以降に開始するようにしています(開始を忘れないように注意が必要)。ST合剤やイソニアジドは皮疹,肝障害などの副作用の頻度が比較的高いため,開始時期をずらすことで抗腫瘍薬の副作用と区別しやすいという利点があります。
予防薬をいつまで継続するかですが,ST合剤による予防の必要性について,HIV感染者と同様にCD4陽性細胞数を目安にするという考え方があります。しかし,プリンアナログやベンダムスチン治療後は治療終了後1年以上たってもCD4陽性細胞数>200/μLとならないことがしばしばあります。ST合剤による腎障害や血球減少も懸念されるので,CD4陽性細胞数にかかわらず,多くは治療終了後6カ月あたりを目安に予防薬も終了します。このような患者さんで持続する発熱,肺炎などをきたした際には,ニューモシスチス肺炎の可能性を考える必要があります。

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