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不正の教訓と臨床試験の法規制 [お茶の水だより]

No.4797 (2016年04月02日発行) P.15

登録日: 2016-04-02

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▼東京地裁で現在、ディオバン論文不正事件(薬事法〔誇大広告の禁止〕違反)の公判が進む。検察側は論文データを改竄したのは統計解析を担当したノバルティスファーマ社の元社員であると主張。元社員はデータ改竄を否定し、統計解析も手伝いをしたにすぎないとして、全面的に争う構えだ。
▼検察側証人として出廷したKyoto Heart Study主任研究者の証言によれば、KHSの主な目的は関連病院を1つにまとめることで、自ら「(ディオバンを用いた)Jikei Heart Studyのような試験がしたい」とノ社に提案。年間3000万円の奨学寄附金と統計解析者の紹介も要求し、承諾された。カルシウム拮抗薬との併用効果を見たサブ解析を発表した際には、当時のノ社社長から「早く論文化して広報に使わせてください」と依頼されたという。公判で浮き彫りとなるのは、医学的研究課題の解明がなおざりにされた臨床試験に、多数の患者が参加させられた事実だ。
▼厚労省検討会は2014年、臨床試験の法規制を提言。これに基づき、厚労省は法案を作成し、今国会の提出を目指す。法案の規制対象は「未承認・適応外の医薬品等の臨床試験」と「製薬企業等から資金提供を受けた医薬品等の臨床試験」。実施医師にモニタリング・監査の実施を義務づけ、罰則規定も設ける。倫理審査委員会についても、研究計画の審査に意見を述べるなど、業務・権限を明確化する方針だ。
▼研究の萎縮をもたらすような過度な規制は避けなければならないが、臨床試験の信頼回復と再発防止のためには一定の規制はやむを得ないだろう。患者・国民の利益につながる臨床試験を実施していくため、早期の再発防止策の実行が待たれる。

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