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【識者の眼】「コミュニティアズパートナーモデルを活用する」坂井雄貴

No.5251 (2024年12月14日発行) P.60

坂井雄貴 (ほっちのロッヂの診療所院長)

登録日: 2024-11-22

最終更新日: 2024-11-22

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前稿(No.5246)は地域診断の1つの方法として「フォトボイス」を紹介した。フォトボイスで出会った様々な地域資源を、実際の地域活動にどのように活かしていくのがよいだろうか。ここではその有用なモデルとして「コミュニティアズパートナーモデル(CAPモデル)」を紹介する。

そもそもCAPモデルは地域看護学に端を発する。看護学における健康との関わりの基本は「その人自身が健康を保持・増進していくための支援」であり、看護師は住民や地域といったコミュニティのパートナーであるという視点に立っている。また、人間と環境、健康が相互に影響し合っているとするシステム理論に基づいていることも大きな特徴である。従来の医学モデルでは、健康と病気を線形の因果関係としてとらえ、病理学的アプローチから健康を考えていた。一方で、健康には心理社会的要素や環境因子などの様々な背景が影響していることは広く知られている。複雑性の高い現代社会での健康を考える上で、私たち医師も看護学の視点から学ぶことは多い。

CAPモデルでは「地域のアセスメントの車輪」から地域を分析し看護診断を行い、計画・介入・評価を行う。地域は1つの生態系ととらえられ、コアとしての住民と、その周囲を囲む8つのサブシステムで構成されると考える。地域のコアには人口統計、住民の価値観や信念、地域の歴史といった要素が含まれ、また8つのサブシステムは、①物理的環境、②教育、③安全と交通、④政治と行政、⑤保健医療と社会福祉、⑥情報、⑦経済、⑧レクリエーション、といった要素として示され、これらは相互に影響し合っている。さらに、車輪で表現された地域構造には抵抗ライン(ストレッサーを防御する内部機構=地域の強み)と防御ライン(地域がこれまで達成してきた健康レベル)があり、住民の健康に影響を与えるストレッサーに対しての地域の反応を表している。

このCAPモデルで特徴的な「地域のアセスメントの車輪」の考え方は、地域診断で大いに活用することができる。たとえばフォトボイスなどの方法を用いて見出した様々な地域資源を8つのサブシステムに分類・整理することで、より網羅的に地域資源の把握をすることができる。サブシステム同士が、あるいはコアである住民とどのように相互に影響しているかを考えることや、抵抗ライン・防御ラインを考えることで地域の強みを見出すことにもつながるだろう。地域医療のプロジェクトを考える上では、今まであまりつながっていなかったサブシステム同士を組み合わせて、アイデアを出してみることもできるかもしれない。

ここで紹介した活用方法はCAPモデルのごく一部にすぎないものの、地域医療を実践していく上で様々なモデルを道具として持っておくことは、きっとコミュニティドクターの地域へのアプローチをより豊かにしてくれるだろう。

坂井雄貴(ほっちのロッヂの診療所院長)[地域医療][コミュニティドクター][地域診断][コミュニティアズパートナーモデル]

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