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添付文書の「運転禁止」記載の見直し求め見解 - 日本てんかん学会 [抗てんかん薬と自動車運転]

No.4720 (2014年10月11日発行) P.7

登録日: 2014-10-11

最終更新日: 2016-11-17

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【概要】投与中の患者が自動車を運転しないよう医師に注意を求めている抗てんかん薬の添付文書について、日本てんかん学会は科学的根拠に基づく記載の見直しを求める見解を示した。


都内で2日に開催された年次学術集会で、川合謙介氏(NTT東日本関東病院)が発表した。
抗てんかん薬には、部分発作に有効なカルバマゼピン、全般発作に有効なバルプロ酸ナトリウムなど多くの薬剤があるが、いずれの添付文書にも、投与中の患者に自動車運転等の危険を伴う機械の操作に従事させないよう注意を求める記載がある。厚生労働省は昨年発出した通達で、添付文書に「自動車運転等の禁止等」の記載がある医薬品を処方する医師に対し、患者への注意喚起の徹底を求めている。
運転禁止、「副作用ある患者に限定を」
同学会の見解では、添付文書の記載と厚労省の通達について、「抗てんかん薬を服用するすべての患者に自動車の運転等を禁止するよう指導する義務があると解釈されかねない」と問題視。抗てんかん薬を服用している患者の多くが発作を起こさずに運転ができているとして、運転禁止の指導を行う対象を「運転等に支障をきたす副作用が生じている患者」に限定すべきと提言している。
その上で、添付文書の記載について、医療の現状や科学的根拠、行政・法律などの多角的視点に基づき、「早急に見直されるべきだ」とした。
日本と海外の抗てんかん薬の添付文書の記載を調査した千葉茂旭川医大教授は、「米英では薬剤ごとに運転制限のレベルが異なるが、日本ではどの薬剤でも医師による運転禁止指導を一律に求めている」と指摘。「抗てんかん薬は持ち越し効果や夜間の睡眠構造の変化を起こし、事故リスクとなる日中の眠気を誘発しうる。しかし同時に、発作を抑えて夜間の睡眠を改善し、日中の眠気を解消する効果もある」として、投与する薬剤と患者の症状に見合った適切な運転制限指導が必要だと強調した。
公安委への届出は「十分な相談の上で」
てんかん患者の自動車運転を巡っては今年、2つの新たな法律が施行されている。5月には自動車運転死傷行為処罰法が施行され、医師の指導によって本人が日中に発作を生じる危険性を分かっていながら運転し、死傷事故を起こした場合、最長で懲役15年の「危険運転致死傷罪」が科されることとなった。
6月施行の改正道路交通法では、てんかんなど「一定の症状を呈する病気」によって運転に支障を生じる恐れのある患者を、医師が公安委員会に任意で届ける制度が新設。医師の診断結果を基に運転免許の取消・停止が決まる仕組みができた。
新たに施行された2法に関して川合氏は、「運転禁止や免許の取消・停止は患者の『移動する権利』を制限することでもある」と述べ、運転禁止指導や公安委員会への届出は、医師が患者と十分に相談した上で行うよう呼び掛けた。

【記者の眼】危険運転に厳罰を科す法が施行され、医師の事故予防に対する責任は一段と大きくなった。しかし安易な運転禁止指導や公安委員会への届出は、患者との信頼関係を壊しかねない。運転の可否についての指導は、本人の了解を得た上での総合的判断が重要となる。(F)

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