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びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の治療選択について

No.5185 (2023年09月09日発行) P.52

松岡賢市 (岡山大学学術研究院 血液・腫瘍・呼吸器内科学准教授)

遠西大輔 (岡山大学病院 ゲノム医療総合推進センター 研究教授)

登録日: 2023-09-06

最終更新日: 2023-09-05

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  • びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(diffuse large B-cell lymphoma:DLBCL)は近年,分子病態の解明による細分類が進み,また一方で,抗CD79b抗体薬物複合体やCAR-T療法といった新しい治療選択肢が増え,今後の個別化医療への進捗が期待されています。DLBCLの治療選択の考え方について,岡山大学病院・遠西大輔先生にご解説をお願いします。

    【質問者】松岡賢市 岡山大学学術研究院 血液・腫瘍・呼吸器内科学准教授


    【回答】

    【初発・再発治療における選択肢が広がった一方,適切な患者選択が課題である】

    DLBCLの治療選択においては,最近大きく2つの選択肢が増えました。

    (1)未治療DLBCLに対するPola-R-CHP療法

    まず,未治療DLBCLでは,抗CD79b抗体薬物複合体(polatuzumab vedotin)を用いたPola-R-CHP療法とR-CHOP療法を比較した臨床第三相試験(POLARIX試験)で,Pola-R-CHP療法はR- CHOP療法に比較し,主要評価項目である無増悪生存期間(progression free survival:PFS)で有意な延長を認めました。これにより,Pola-R-CHP療法は標準療法のひとつとして初回治療の選択肢に加わり,わが国ではPola-R-CHP療法は未治療DLBCL全例に使用可能となりました。

    一方,R-CHOP療法との使い分けが話題になっています。まずPOLARIX試験が国際予後指標(International Prognostic Index:IPI)2以上の症例を対象にしていたため,比較的病勢の強い症例にPola-R-CHP療法が選択されるケースが多いと思われます。一方,DLBCLは分子学的亜型としてABC-DLBCLとGCB-DLBCLに大別されますが,POLARIX試験でのサブ解析において,ABC-DLBCLではR-CHOP療法に比較しPola-R-CHP療法で非常に高い有効性が認められたのに対して,GCB-DLBCLではR-CHOP療法とほぼ同等のデータであったことから,GCB-DLBCLではR-CHOP療法が選択されることもあるようです。しかし,この結果はサブ解析に基づくことや,遺伝子発現プロファイルによる正確なGCB-DLBCLの同定法が確立していないことなどに注意する必要があります。

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