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【識者の眼】「地域に根ざしたこれからの医療活動:コミュニティー・ドクターの挑戦」松村真司

No.5183 (2023年08月26日発行) P.61

松村真司 (松村医院院長)

登録日: 2023-08-09

最終更新日: 2023-08-09

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地域に根ざした医療活動を行っている医師はとりたてて珍しい存在ではない。地域に住み、住民として生活をともにしながら、日常診療に加え学校医や産業医といった様々な形で地域社会に貢献し、長年地域とともに歩んできた開業医の存在は、ありふれていて特別視するものでもないと考える人も少なくないだろう。住民の高齢化が進んだ近年では、政策的な後押しもあり、地域包括ケアの担い手の1人として、介護・福祉職のみならず行政を含む多くの地域のセクターと連携をとることは、多くの開業医にとって必須の活動となっている。

ただ昨今では、若い世代の医療職を中心に、地域住民の健康増進のみならず、一歩進んで日常活動やまちづくりへの参画などの新たな活動を進めていることが一部で注目を集めはじめている1)2)

このような活動は、すべての人にとって健康を基本的な人権として認め、その達成の過程において住民の主体的な参加や自己決定権を保障するプライマリ・ヘルスケアの理念にも合致したものである3)

もちろん、どのような医療機関においてもこのような活動は可能であるが、その方法論は、各医療機関の役割や地域の特性によっても異なるものになるであろう。しかし、地域住民を主体とし、人々の最も重要なニーズに応え、問題を住民自らの力で総合的にかつ平等に解決していく原則的な方法論は共通のものであると思われる。これらの方法論を学術的に深め、多くの医療者の教育・実践に生かしていくことは、これからの医療においてきわめて重要なことであると思われる。

コロナ禍で、様々な地域において直接的な交流が制限された一方、インターネットを通じた非対面の交流が増えたことで、人々の孤立・分断化は都市部を中心に急速に進行している。そのような中、地域社会を健康という側面から再び活性化させていくこのような活動は、地域医療に従事している私たちにとって重要な活動の1つになる可能性を秘めている。これは日本医師会が提示している「かかりつけ医の概念」とも共通する部分は多く4)、地域社会におけるかかりつけ医機能としても重要なものになるであろう。

コミュニティー・ドクターの実践・教育・学術活動がさらに活発になり、それを通じて地域社会に貢献することによって、住民からの信頼が寄せられることは、私たちの価値の再発見にもつながると思われる。彼らの挑戦と、今後の進化に期待を寄せていきたい。

【文献】

1)Community Nurse Company公式サイト.
https://community-nurse.jp/

2)コミドク公式サイト.
https://www.commudoc.com/

3)World Health Organization & United Nations Children’s Fund(UNICEF):What is primary health care? A vision for primary health care in the 21st century:towards universal health coverage and the Sustainable Development Goals. 2018.
https://apps.who.int/iris/handle/10665/328065

4)日本医師会:国民の信頼に応えるかかりつけ医として.(2022年4月)
https://www.med.or.jp/dl-med/teireikaiken/20220427_kakarip.pdf

松村真司(松村医院院長)[地域社会の活性化][かかりつけ医]

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