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同種造血幹細胞移植後の慢性GVHD治療の現状と分子標的薬の使い方について

No.5169 (2023年05月20日発行) P.56

島田和之 (名古屋大学医学部附属病院血液内科講師)

稲本賢弘 (国立がん研究センター中央病院 造血幹細胞移植科)

登録日: 2023-05-17

最終更新日: 2023-05-16

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  • 同種造血幹細胞移植後の慢性移植片対宿主病(graft versus host disease:GVHD)に対する治療の現状と分子標的薬の使い方についてご教示下さい。
    国立がん研究センター中央病院・稲本賢弘先生にご解説をお願いいたします。

    【質問者】島田和之 名古屋大学医学部附属病院血液内科講師


    【回答】

    【慢性GVHDの病態に合わせて分子標的薬を選択する時代が来るかもしれない】

    慢性GVHDは同種造血幹細胞移植後に発症する合併症のひとつであり,自己免疫疾患に類似した症状を呈し,皮膚,眼,口腔,肺,食道,消化管,肝臓,筋肉,関節・筋膜,生殖器,漿膜などの様々な部位が標的となります。これまで初回治療に関して10の無作為化試験が行われてきましたが,現在でも標準治療はプレドニゾロン0.5~1.0mg/kgを追加することです。初回治療の効果が不十分で二次治療を要する割合は5割以上であり1),より有効な二次治療の開発をめざして研究が進んでいます。この10年間で動物モデルを中心に慢性GVHDの病態機序に関する知見が増え,急性炎症に始まり,慢性炎症・免疫調節不全を経て,組織の線維化をきたして後遺症に至る,という3段階のモデルが定説となりました2)。また,これまで3回行われたNIH国際コンセンサス会議によって,客観的な診断基準・治療効果判定基準・治験デザインが明確になったことが新薬開発に貢献しています。米国において3つの新薬(Ibrutinib,Belumosudil,Ruxolitinib)が慢性GVHD治療薬として米国食品医薬品局(FDA)に承認されました3)

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