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【識者の眼】「医療者のバーンアウトを防ぐためのアクション」松村真司

No.5134 (2022年09月17日発行) P.57

松村真司 (松村医院院長)

登録日: 2022-09-05

最終更新日: 2022-09-05

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新型コロナウイルス感染症の第7波は、これまでで最も大きな影響を医療現場に与えており、減少はするもののしばらくこの傾向は続くと思われる。また、インフルエンザとの同時流行が想定されるこの冬は、さらに影響が大きくなることも予想されている。引き続き医療者には厳しい状況が続くことになるであろう。

医療現場の疲弊は既に極限に達している。そのため、医療者のバーンアウト対策は急務であると前回(No.5129)指摘したが1)、未だ対策は打ち出されていない。今回は、先にビベック・マーシー米国公衆衛生局長官が主張したバーンアウト対策を下地に2)、わが国における状況をふまえてなすべき4つの対策について私論を述べてみたい。

第一にすべき対策は、現場の医療者の安全を確保することを改めて宣言することである。既に医療者の感染が起こり、検査や薬品の欠品も起きている。患者の安全の確保はもちろんであるが、医療者の安全が脅かされることはあってはならない。また、これには暴力や誹謗中傷への毅然とした対応も含まれる。そしてこれらの対応は個人としてではなく、組織として行われるべきである。

第二にすべき対策は、不要な事務作業の削減である。現在全数報告に関する議論が行われているが、問題の本質は現場に負荷をかけている事務作業を削減することにある。現場から十分に意見を聴取し、これら以外にも不要な事務作業の削減は徹底的に進めて欲しい。

第三にすべき対策は、医療職へのメンタルサポートの整備である。既に働き方改革に関連し、一部進んでいる部分もあるが十分ではない。専門職の協力を得ながら、早急に整備を進めていくべきである。

最後の対策として、医療者のウェルビーイングを重視する文化の醸成を指摘したい。伝統的な医療者の職業規範は、患者を優先し、自己犠牲と忍耐を善とするものの、自らの健康管理についての記載は少ない3)。しかし、患者と社会を守るために自らのウェルビーイングを維持することはこれらの職業規範と両立しうるものである。まずは、医療団体がこれらを明示し、若い医療者をそのような文化の中で育てていくことが求められる。

以上について十分な対策が実行されるまでには一定の時間が必要であろう。しかし方向性を示すことであれば、今すぐにもできる。今後、医療職を待ち受けている困難の前に、バーンアウトを防ぎつつ対峙していくためには必要なアクションであると考える。

【文献】

1)松村真司:医事新報. 2022;5129:57.

2)Murthy VH:N Engl J Med. 2022;387:577-9.

3)日本医師会:日医師会誌. 2022;151(4):付録.
https://www.med.or.jp/dl-med/doctor/rinri/inorinri_leaflet.pdf 

松村真司(松村医院院長)[新型コロナウイルス感染症]

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