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(2)高齢者急性骨髄性白血病に対する治療と合併症対策[特集:高齢者で増加している急性骨髄性白血病]

No.5037 (2020年11月07日発行) P.28

山内高弘 (福井大学医学部血液・腫瘍内科教授)

登録日: 2020-11-06

最終更新日: 2020-11-04

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執筆:山内高弘(福井大学医学部血液・腫瘍内科教授)

Point

白血病細胞側因子(染色体異常,遺伝子異常),患者側因子(身体・認知機能,併存症),患者・家人の希望,社会的サポートの4面から治療適応を決定する

高齢者白血病細胞では予後不良と考えられる,5番,7番異常,複雑核型,monosomyといった染色体異常,FLT3変異,RUNX1変異,ASXL1変異,TP53変異,secondary-type変異が挙げられる

患者側因子として,身体・認知機能,併存症が重要である

fit症例に対する強力寛解導入療法として,シタラビン(Ara-C)(またはエノシタビン)+アントラサイクリンが選択され,完全寛解率は約6割である

unfit症例に対する非強力寛解導入療法として少量Ara-Cがあり,完全寛解率は約2割である

新規薬剤として,FLT3阻害薬が再発・難治例に用いられる

予備力が低下している寛解導入療法中は特に合併症に注意する

1. 高齢者急性骨髄性白血病

1 急性骨髄性白血病(AML)の治療

急性骨髄性白血病(acute myeloid leukemia:AML)の治療は,化学療法と造血幹細胞移植を両輪として発展してきた。わが国では,成人白血病治療共同研究機構(Japan Adult Leukemia Study Group:JALSG)により精力的に臨床研究がなされてきた。最新のJALSG AML201第3相試験では,65歳未満の若年成人AMLに対するシタラビン(Ara-C)とアントラサイクリン〔ダウノルビシン(DNR)またはイダルビシン(IDR)〕併用による完全寛解率は約78%,続く地固め療法(高用量Ara-C療法または通常量Ara-C併用多剤化学療法)による5年生存率は48%である1)2)

しかし,65歳以上の高齢者ではこのような強力な化学療法は適応となりにくい。

2 高齢者AML細胞の特徴

AMLでは細胞遺伝学的異常,遺伝子変異が予後層別化に最も大きく寄与する。高齢者AML細胞では5番,7番染色体異常,複雑核型(3個以上の染色体異常を伴う),monosomyなどの予後不良と考えられる染色体異常がより高い頻度で認められる3)4)。AMLでも他がん腫と同様に網羅的遺伝子解析が進み,FLT3(Fms-like tyrosine kinase 3),NPM1,DNMT3A,CEBPA,KIT,TET2,RUNX1,IDH1,IDH2等の主要な遺伝子変異が同定された5)。それらのうち,FLT3変異,RUNX1変異,ASXL1変異,TP53変異は,年齢を問わず重要な予後不良因子である6)。FLT3変異の頻度は,高齢者では減少する7)。高齢者において頻度が増える予後不良遺伝子変異として,TP53変異,ASXL1変異,TET2変異,DNMT3A変異が重要である。いずれも治療抵抗性であることが示唆されている8)~10)

高齢者AMLでは,若年に比べ,骨髄異形成症候群(myelodysplastic syndromes:MDS)や骨髄増殖性疾患から進展した二次性白血病の頻度が高い11)。MDSから進展した二次性AMLでは,de novo AMLと異なり,secondary-type変異とされる遺伝子変異が認められる8)。secondary-type変異にはSRSF2,SF3B1,U2AF1,ZRSR2,EZH2,BCOR,STAG2,前出のASXL1が含まれる。一方,高齢者では予後良好に寄与するNPM1変異の頻度は低下し,CEBPA変異の頻度は変わらない7)。そのほか,治療薬剤抵抗性に寄与する遺伝子変異として,薬剤トランスポーターであるMDR変異,MRP変異,LRP変異,DNA修復機構に関わるATM変異,生存シグナルであるPIK3CA変異,そのほかRAS変異,TOP2変異,アポトーシス関連BCL2変異,MCL1変異が挙げられる12)

3 高齢者の身体的評価

高齢化に伴い身体能力や臓器予備能は低下し,場合によっては既に白血病以外に治療中の疾患を複数有している。年齢が上がるにつれ,AML細胞側因子よりも患者側因子の比重が増す。身体能力には個人差が大きく,化学療法に耐えうるか否かは,暦年齢だけで評価できない。

高齢者の評価として,高齢者総合機能評価(comprehensive geriatric assessment:CGA)は身体機能,併存症,認知機能,身体的/精神的健康状態,栄養状態,そしてポリファーマシーについての評価一式である。たとえば,まずスクリーニングとしてCGA7により意欲,認知機能(復唱,遅延再生),基本的ADL(入浴,排泄),手段的ADL(交通機関の利用),情緒を評価する。必要に応じて,引き続きVitality Index(意欲),MoCA-J(認知),Barthel Index(基本的ADL),IADL(手段的ADL),SPPB(下肢),GDS-15(うつ病)により詳細に評価する。併存症評価には,Charlson Comorbidity Indexを用いる。AMLの寛解導入療法時においても本評価法が適切であることが報告されている13)。併存症については,Charlson Comorbidity Indexによる高齢者AMLの寛解導入療法後の予後評価に関する報告がある14)。また,造血幹細胞移植時の併存疾患のリスク分類(Hematopoietic Cell Transplantation-specific Comorbidity Index:HCT-CI)15)はCharlsonスコアの変法である16)。これが高齢者AMLにおける化学療法施行時のリスクや1年生存率と相関することが報告された17)18)。様々な報告から,高齢者AML治療成功の可否には,患者側因子として認知機能,身体機能,併存症の3点が重要であろうと思われる。

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