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「エンドオブライフ・ケア協会を設立しました」[長尾和宏の町医者で行こう!!(51)]

No.4758 (2015年07月04日発行) P.17

長尾和宏 (長尾クリニック)

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-02-15

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  • 2025年問題と地域での看取り

    在宅医療には2つの側面がある。個々の患者さんの利益と国の財政事情だ。在宅医療の推進が謳われてはや10数年が経過している。しかしいつまでたっても「在宅医療元年」と言われていて遅々とした歩みに感じる。「がんと診断された時からの緩和ケア」と言われて20数年が経過しても、あまり変わっていない状況とどこか似ている。

    ここ数年は最期まで住み慣れた地域で暮らす「地域包括ケア」が推進されている。多死社会のピークである2025年問題を乗り切るにはこの方策しかないという。近畿地区で「地域包括ケアとは何か?」というシンポジウムを開催したら、「地域包括ケアとは看取りである」という意見が多かった。しかし在宅や施設での看取りは思うように増えていない。こんな調子で本当に2025年問題は大丈夫なのだろうか。

    在宅医療や地域包括ケアシステムの推進への阻害因子はいくつか指摘されている。ひとつは、夜間の対応だろう。医師であれ看護師であれ介護士であれ、夜間対応の現実は大変である。そこに患者さんが苦しがって悶えたら、在宅医でさえどうしていいか分からず救急車を要請してしまうということも少なくない。それは、受け入れる側の病院勤務医の疲弊を加速している側面もある。

    もうひとつは、緩和ケアのスキルの底上げの遅れではないだろうか。がん対策基本法に基づいて緩和ケアの研修会が全国各地で開催されている。モルヒネの使い方の講習やロールプレイは好評である。しかし実際に在宅現場に出たとき、「もう殺してくれ!」と叫ぶ患者さんにどう対応すればいいのか?おそるおそる在宅医療に取り組みはじめたものの、患者さんの様々な訴えを受け止める自信がない、という声を全国各地で聞く。

    2025年まで残された時間はあと10年。このわずか10年間に、地域で看取りができる人材をしっかり養成しなければならない。このような想いで、めぐみ在宅クリニックの小澤竹俊先生と北里大学の小野沢滋先生と私たち有志が理事となり、今年5月に一般社団法人「エンドオブライフ・ケア協会」を設立し、看取りができる人材育成に取り組み始めた。厚労省で行ったプレスリリースには多くのメディアが集まり、関心の高さを感じた。

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