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造血幹細胞移植後血栓性微小血管障害(TA-TMA)の診断と治療について

No.4980 (2019年10月05日発行) P.52

日笠 聡 (兵庫医科大学血液内科講師)

上田恭典 (倉敷中央病院血液内科主任部長)

登録日: 2019-10-02

最終更新日: 2019-10-01

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  • 造血幹細胞移植後の重篤な合併症に血栓性微小血管障害(thrombotic microangiopathy:TMA)があります。血栓性血小板減少性紫斑病(thrombotic thrombocytopenic purpura:TTP)や非典型溶血性尿毒症症候群(atypical hemolytic uremic syndrome:aHUS)と異なり,造血幹細胞移植後TMA(transplantation associated TMA:TA-TMA)の病態は現在も十分解明されていない状況かと思いますが,先生の施設では,診断と治療をどのように行っているのでしょうか。倉敷中央病院・上田恭典先生にご回答をお願いします。

    【質問者】

    日笠 聡 兵庫医科大学血液内科講師


    【回答】

    【他病態の可能性との相対的評価で診断。治療はカルシニューリン阻害薬の減量から開始】

    (1)診断

    TMAは,血管内皮障害により血小板血栓が生じて,阻血による臓器障害と,消費性血小板減少,微小血管性溶血性貧血を生じる病態です。vonWillebrand factor(VWF)切断酵素であるAD AMTS13の先天的・後天的著減により血管内皮から分泌されたunusually large VWF multimer(ULVWFM)の切断ができず,VWF/血小板血栓を生じるTTP(血栓性血小板減少性紫斑病)や,Shigatoxinが細胞障害を生じ,fibrinogen/fibrin/血小板血栓を生じるHUSと異なり,多くは,移植前処置,移植後の移植片対宿主病(graft versus host disease:GVHD)予防に用いるカルシニューリン阻害薬,GVHD,ウイルス等の感染,接着因子の発現等による内皮障害が原因と考えられます。LDH,ビリルビンの上昇,血小板低下,ハプトグロビン著減,破砕赤血球の増加,血小板輸血不応,腎機能障害,下痢,血便などを生じますが,組織診で確定診断を得ることは困難な場合が多く,診断基準が確立していないため,他病態の可能性との相対的評価となります。自家移植後に生じる場合もあります。

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