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von Willebrand病[私の治療]

No.4972 (2019年08月10日発行) P.44

日笠 聡 (兵庫医科大学病院血液内科講師)

登録日: 2019-08-12

最終更新日: 2019-08-07

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  • von Willebrand病(von Willebrand disease:VWD)は,フォン・ヴィルブランド因子(von Willebrand factor:VWF)の量的あるいは質的な異常により発症する先天性の出血性疾患で,多くは常染色体顕性(優性)遺伝,一部は常染色体潜性(劣性)遺伝により伝播する。VWDは先天性出血性疾患の中では最も多く,推定頻度は1万人当たり100人と報告されているが,出血症状を呈する症例はその中の約1%(1万人に1人)程度と考えられている。

    ▶診断のポイント

    VWDの診断は出血歴,家族歴,投薬歴の聴取と凝血学的検査によって行う。凝血学的検査は,スクリーニングとして,全血球数,出血時間,プロトロンビン時間(PT),活性型部分トロンボプラスチン時間(aPTT),フィブリノゲンを測定する。全血球数,PT,フィブリノゲンが正常で出血時間,aPTTに延長がみられる場合,あるいは出血時間,aPTTが正常範囲でも明確な出血症状がある場合は,VWF:Ag,VWF:RCo,第Ⅷ因子活性(FⅧ:C)を測定する。VWF:RCoまたはVWF:Agが30IU/dL未満の場合をVWDと診断する。ただし,出血症状がありVWF値が30~50IU/dLの場合も,VWDを除外することはできない。

    VWFは変動が大きく,血液型(O型は他よりもVWF量が約25%低い)などの様々な要因により増減するため,VWDの診断に際してはVWF:RCo,VWF:Agの測定を複数回実施する。VWDは質的に正常なVWFの量的減少症である1型(type 1),完全欠乏症の3型(type 3)と,VWFの質的な異常である2型(type 2)に分類される。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    VWDの治療は,低下したVWFおよびFⅧを補正し,出血の治療,予防を行うことである。現在,わが国において使用可能な薬剤は,血管内皮細胞から内在性のVWFを放出させる酢酸デスモプレシン(1-deamino-8-D-arginine vasopressin:DDAVP)と,経静脈的にVWFを補充するVWF含有第Ⅷ因子濃縮製剤(VWF/FⅧ製剤)の2種類である。DDAVPのVWDに対する効果は,病型や遺伝子型,表現型によっても異なり,一般的にはVWF:RCo,FⅧ:Cが10%以上のtype 1には効果が期待できるが,type 3には効果がない。止血治療にDDAVPを用いる場合は,非出血時に投与試験を行い,あらかじめ効果のピークや持続時間を評価する必要がある。DDAVPの投与が懸念される小児例や,効果が見込めないtype 3例以外のVWD症例には,診断後比較的早期にDDAVPの投与試験を行うことが望ましい。

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