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【OPINION】診断時からの緩和ケアの推進に向けて

No.4769 (2015年09月19日発行) P.17

細川豊史 (日本緩和医療学会理事長 京都府立医科大学疼痛・緩和医療学講座 教授)

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-02-13

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  • がんの現状

    本邦のがん罹患患者数は約150万人で、そのうち年間の死亡者は36.4万人である(2013年)。1981年から“がん”は本邦での死亡原因の第一位であり、死亡者全体の約30%を占めている今や日本人男性の60%、女性の48%が、がんに罹る時代となっている。しかしかつてのように、多くが5年以内に死亡するということはなく、3人に2人(65%)が5年以上生存しているとされ、慢性疾患としてがんを考える時代となってきている。

    近年のがん対策

    2007年4月に施行された「がん対策基本法」には、本邦での手術、化学療法、放射線療法および緩和ケアにおける“がん医療の均てん化”の促進が明示され、第16条には、がん診断早期から痛みの緩和を目的とする治療を行うこと、そしてその人材育成と基盤整備、つまりソフトとハードの整備を行うことが明記されている。

    この実務的施策として厚生労働省が作成した「第1期がん対策推進基本計画」では、全体目標を(1)がん死亡者の減少、(2)すべてのがん患者・家族の苦痛の軽減と療養生活の質の向上、とした。さらに重点的に取り組む課題として、①放射線療法・化学療法の推進と、これらを専門的に行う医師等の育成、②治療の初期段階からの緩和ケアの実施、③がん登録の推進─を掲げ、同時に個別目標として、がん医療機関の整備、がん検診の促進、がん予防対策、がん医療に関する相談支援情報提供、そしてその基本となるがん研究の推進が示された。

    この計画のもとに5年間にわたり本邦のがん対策が進められ、それなりの成果は得られてきた。そして2012年6月には「第2期がん対策推進基本計画」が発表され、全体目標に(3)がんになっても安心して暮らせる社会の構築、が新たに加わった。重点的に取り組む課題としては表1の施策を掲げた。

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