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ペースメーカー装着者に電気を用いた経穴刺激療法は行えるか?

No.4944 (2019年01月26日発行) P.59

伊藤 剛 (北里大学客員教授/ 北里大学東洋医学総合研究所)

登録日: 2019-01-25

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ペースメーカーを装着中の患者に,マイクロ波による温熱療法やsilver spike point(SSP)などの経穴刺激療法を施行しても支障がないでしょうか。不可の際は,可能な温熱療法をご教示下さい。

(大阪府 C)


【回答】

【電流を生じる治療法はペースメーカー誤作動の危険があり,禁忌である】

厚生労働省や総務省などでペースメーカー装着者に注意を喚起している機器はIH調理器(電磁調理器),IH炊飯ジャー,電気カミソリ,電動歯ブラシ,ドライヤー,家庭用電動工具などのほか,肩こり治療器等の低周波治療器,高周波治療器,医療用電気治療器等です。

SSP療法は,神経や筋に電気刺激を与える低周波治療で,身体に貼り付けた電極間に電流が流れるため,ペースメーカーを誤作動させる危険性があります。またマイクロ波は,電子レンジ同様,電磁波が体内の水分が多い組織に反応し,深部の筋肉などに温熱刺激を与える機器ですが,同時に金属には電流が生じるため,金属部が加熱されたりショートしたりする危険性があります。そのため,どちらもペースメーカー装着者には禁忌です。

鍼灸は,ペースメーカーを装着された患者にも,ペースメーカーの装着された部位周辺を避ければ,通常の治療は行えます。また他の温熱刺激療法としては,火や煙が出るため,使用環境が限定されてしまうのが弱点ですが,「お灸」は,古の時代から行われてきた治療効果が高い温熱療法です。一方,最近改良された充電池で加熱する電気温灸器は,火を使えない環境で使用でき,煙が出なくて大変便利です。しかし,電気機器であるため,ペースメーカー装着者に対しては,特別な状況を除いて,基本的には使用しないほうが安全です。

【回答者】

伊藤 剛 北里大学客員教授/ 北里大学東洋医学総合研究所

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