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咽頭痛 × 小柴胡湯加桔梗石膏[漢方スッキリ方程式(21)]

No.4937 (2018年12月08日発行) P.14

星野朝文 (国立病院機構霞ヶ浦医療センター 耳鼻咽喉科医長)

登録日: 2018-12-10

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咽頭炎・扁桃炎に伴う咽頭痛に有効

咽頭炎や扁桃炎に伴う咽頭痛は,一般外来でよく経験するものである。抗生剤の使用については,薬剤耐性(AMR:Antimicrobial Resistance)の点からも適正使用を考慮すべきであるが,細菌性が強く疑われる場合には処方する。抗生剤を使用したとしても,それ自体には抗菌作用はあるものの,抗炎症作用・鎮痛作用は期待できない。

そこで抗炎症効果を狙ってトラネキサム酸などの薬剤を処方する医師が多いが,私は代わりに小柴胡湯加桔梗石膏を処方する。小柴胡湯加桔梗石膏には扁桃炎,咽頭炎に対する有効性の報告もあり1),適応病名にも「扁桃炎,扁桃周囲炎」とあることから,咽頭痛には使いやすい処方である。

葛根湯と併用すれば急性期にも使える

小柴胡湯加桔梗石膏は,亜急性期の感冒(風邪)に用いる小柴胡湯が基本骨格である。小柴胡湯は,発症後5日以上経過した感冒患者を対象とした,多施設共同の二重盲検比較試験で有効性と安全性が示されている処方である2)。その小柴胡湯に,排膿,鎮咳,去痰作用のある桔梗と,強い清熱作用のある石膏を加えたものが,小柴胡湯加桔梗石膏である。

それでは急性期(例えば発症後5日以内)の咽頭痛には使えないか,というとそうでもない。その場合は葛根湯と併用処方することで,柴葛解肌湯という処方に類似したものとなり,より強力な抗炎症効果が期待できる。

まとめると,発症後すぐの咽頭痛には小柴胡湯加桔梗石膏と葛根湯を併用し,数日経過した咽頭痛には小柴胡湯加桔梗石膏を処方する,というのがコツである。

提示症例のように,ウイルス性疾患である伝染性単核球症に伴う扁桃炎には,AMRの観点からも抗生剤は不要であるばかりか,ペニシリン系抗生剤は禁忌であり処方できる薬剤も限定的である。こういった症例を含め、抗生剤が不要であり、何かパンチに欠ける状況においては小柴胡湯加桔梗石膏が重宝する。

 

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