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「普通の」めまい × 苓桂朮甘湯[漢方スッキリ方程式(19)]

No.4929 (2018年10月13日発行) P.14

佐藤公輝 (市立旭川病院耳鼻咽喉科診療部長)

登録日: 2018-10-11

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めまいは日常診療でよく遭遇する訴えのひとつであるが,その成因は多岐にわたり,中枢性疾患や心疾患など緊急を要する基礎疾患を除外することがまず重要で,激しい嘔吐や頭痛,難聴,眼振を伴った例なども専門科に相談すべきである。

しかし,そのようなめまい症例は一般外来では比較的少なく,通常よくみられる「普通の」めまい症例には苓桂朮甘湯をおすすめしたい。

当科において苓桂朮甘湯を処方しためまい症例138例(2010年1月~2015年10月)の検討では,著効例63例を含む有効例は99例で有効率72%であった。めまい症状がほぼ消失した著効例の分布をみると,14歳から90歳まで幅広い年齢層で著効が得られており,また,回転性めまい,ふらつきのめまい,いずれのタイプの症例にも多くの著効例が見られた(図1)。

同時期に行った五苓散や半夏白朮天麻湯の結果と比較して,有効率,著効例の分布ともに,苓桂朮甘湯はめまいの第一選択にふさわしいと思われた。

服薬2週で無効の場合は転方

有効例99例の検討によれば,服薬効果を自覚できるのは服薬開始後1日~2週で,2週以内にほぼ全例が効果を実感していた。同様に,めまい症状の消失時期は1日~1カ月で,ほとんどの例で服薬1カ月以内にめまいが消失した(図2)。これらの結果は,苓桂朮甘湯の初回処方日数,効果判定時期,最大投与日数にそれぞれ置き換えることができ,2週で無効の場合は転方を,1カ月でめまい症状が残る場合は転方や合方を考慮したほうが良いだろう。

また,この結果は,苓桂朮甘湯という方剤の使い方を示唆しているとも言え,めまい症例以外にも広く応用できるのではなかろうか。

 

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