株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

骨髄バンク経営危機【臍帯血移植やHLA不適合移植の台頭】

No.4911 (2018年06月09日発行) P.53

谷口修一 (虎の門病院血液内科部長・副院長)

登録日: 2018-06-07

最終更新日: 2018-11-28

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

造血幹細胞移植は,通常の治療で治癒できない患者を救ってきた。移植にはHLA一致ドナーの存在が必須である。HLAは,同胞では1/4の確率で一致するが,血縁以外の一致率は数百~数万人に1人である。逆に言えば,数万人以上のプールがあればドナーが見つかる。この考え方が骨髄バンクの原点である。わが国では,1992年に骨髄バンクが発足し,血縁ドナーがいない患者にとって骨髄バンクは唯一の命をつなぐ道となった。

しかし,2014年に骨髄バンクはおよそ1億円,その後も数千万円単位の赤字を計上した。これは骨髄バンクの財政基盤が脆弱である上に,患者収入や寄付に頼っていることが要因である。移植数も13年の1360例をピークに年々減少している。その背景には,臍帯血移植やHLA不適合移植(ハプロ移植)の台頭がある。いずれの移植も,ほぼすべての患者で待ち時間がなく,緊急の移植すらも可能とする。臍帯血は生着不全,感染症が多いという短所があったが,現在では骨髄バンクと比べて遜色がない。ハプロ移植も強い移植片対宿主病が問題とされたが,安全な移植法が開発された。

骨髄バンクの最大の問題は,移植まで平均5カ月を要することにある。以前はそれでも骨髄バンクドナーを待ったのであるが,現在では途中で臍帯血やハプロ移植に切り替える。

国内すべての施設で臍帯血やハプロ移植の成績が安定しているわけではない。骨髄バンクドナーを待ちたい施設が存在する現在,財政を安定させ5カ月の待ち時間を3カ月以内にする必要がある。

【解説】

谷口修一 虎の門病院血液内科部長・副院長

関連記事・論文

もっと見る

関連書籍

関連求人情報

関連物件情報

もっと見る

page top