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医業経営ツールボックス 経営編 Vol.12

◆Vol.12 医療機関での助成金・補助金の利用

クリニック開業(非医療法人)後、7年の医師です。
クリニック開業や経営に返済義務なしの公的資金を有効利用する話を耳にすることがありますが、どのようなものなのか?
必要書類など手続きや条件が厳しいようにも感じます。医療機関で受給可能なものについて知りたいのですが。

返済義務のない公的資金としては、助成金や補助金というものがございます。
主に国や地方自治体、または公益財団法人などから支給されるものです。

積極的に利用したいものですが、その種類・募集期間などが多様であるため、情報収集や自院に該当するかの判断が難しい点も多々見られます。
社会保険労務士や会計事務所などプロのサポートもお薦めです。

●助成金と補助金の違い
・助成金とは、主に国(厚生労働省など)・地方自治体等から人材育成・労働環境改善などについて支給されるものが多く、要件をクリアすれば受給確率は高いものです。
・補助金とは、主に国(経済産業省・中小企業庁・農林水産庁など)・地方自治体等から、起業・経営改善・事業活性化推進のために支給されるものが多く、事業計画書による審査・面接により受給の可否が決定されます。支給要件をクリアしても全て受給できるとは限らない点が、助成金とは異なる点です。

簡単な比較表を表示しますのでご覧ください。

表1 助成金・補助金の違い

助成金 補助金
管轄(医療系に関連するものをご紹介) 国(主に厚生労働省など)・地方自治体・公益財団法人 国(主に経済産業省・中小企業庁など)・地方自治体・公益財団法人
支給目的 雇用促進・人材育成・労働環境整備など 地域活性化・生活環境整備など
受給条件1 雇用保険料納付 中小企業庁が管轄の場合、企業規模は中小企業に限定
受給条件2 各助成金の支給要件を満たせば、受給確率は高い 各補助金の支給要件を満たすだけでなく、審査により選抜
支給時期 後払い 後払い
募集時期 随時または長期間 短期間(数週間・1カ月など)


●医療機関で受給可能な助成金
助成金の種類は多種ございますが、今回は誌面の都合上、一部を参考としてご紹介いたします。
なお、事業者規模・形態により支給額が異なる場合もありますので、詳細は厚生労働省ホームページをご覧ください。

【雇用関連助成金】
◆キャリアアップ助成金(平成30年4月改正あり)
有期契約労働者、短時間労働者、派遣労働者など、非正規雇用労働者に対し正社員化、処遇改善を実施した事業主に助成。各コースごとに助成金が支給されます。
1.正社員化コース
【有期→正規:57万円/1人  有期→無期:28.5万円/1人  無期→正規:28.5万円/1人】
有期契約労働者等を正規雇用労働者等に転換、または直接雇用した場合(支給上限20人)
2.賃金規定等改定コース
【対象労働者数1人~3人:1事業所当たり95,000円】
すべてまたは、一部の有期契約労働者等の賃金規定等を2%以上増額改定昇給した場合
3.健康診断制度コース
【1事業所当たり38万円】
有期契約労働者等を対象に「法定外健康診断制度」を新たに規定、延べ4人以上実施した場合
4.賃金規定等共通化コース
【1事業所当たり57万円】
有期契約労働者等に関し正規雇用労働者と共通の職務等に応じた賃金規定等を作成適用した場合
5.諸手当制度共通化コース
【1事業所当たり38万円】
有期契約労働者等に関して正規雇用労働者と共通の諸手当制度を新たに設定適用した場合
6.選択的適用拡大導入時処遇改善コース
【1人当たり19,000円】
有期契約労働者等を新たに被保険者とし、基本給を増額した場合
7.短時間労働者労働時間延長コース…諸手当制度共通化コース
【1人当たり19万円】
短時間労働者の週所定労働時間を延長し、新たに社会保険を適用した場合
◆特定求職者雇用開発助成金
【60万円】高齢者(60~65歳)、母子家庭の母親、障害のある方などを、ハローワークの紹介により雇用した場合
◆トライアル雇用助成金
【12万円】職業経験、技能、知識等から安定的就職が困難な求職者を、ハローワークや職業紹介事業者等の紹介により、一定期間試行雇用した場合

【人材育成関連】
◆キャリア形成促進助成金
職務に関連した専門的知識及び技能習得のための職業訓練などを実施、人材育成制度導入適用した際の、訓練経費、賃金の一部等を助成
支給内容が多岐のため支給額は別途確認ください。スタッフのスキルアップには大変有益な助成金です。自院に適用可能な教育制度を見つけて申請をお薦めします。
厚生労働省の助成金について詳細は、こちらをご覧ください。

●医療機関で受給可能な補助金
補助金は、助成金とは異なり募集期間が短い場合が多く見逃しやすいため、こまめな確認が必要です。気づくことができれば、競争率が低くなり受給確立が高まる場合もありますので、チャレンジしてみることをお勧めします。
ただし、受給要件クリアだけでなく、審査・面接でが必要なためこの点では助成金よりハードルが高いとも言えます。
今回はこちらも受給可能な補助金の一例をご紹介します。

創業補助金(地域創造的起業補助金)
【上限200万円(補助率:1/2以内)】
地域の雇用や需要をサポートする事業のための創業・起業を行う法人と個人に対して支給。
各認定市区町村等による特定創業支援事業については、中小企業庁のホームページをご覧ください。

事業承継補助金
(Ⅰ型)「後継者承継支援型 ~経営者交代タイプ~」
【上限200万円 ※事業転換の場合、最大300万円上乗せ可能】
事業承継(事業再編、事業統合を除く)を契機として経営革新等や事業転換を行う中小企業者に対し、その新たな取組に要する経費の一部を補助。親族内承継・外部人材招聘など。
(Ⅱ型)「事業再編、事業統合支援型 ~M&Aタイプ~」
地域経済に貢献する中小事業者が行う、合併・会社分割・事業譲渡・株式交換・株式移転・株式譲渡などM&A等を伴う取組に要する経費の一部を補助。

◆ものづくり・商業・サービス革新補助金
【1,000万円を上限として、補助率2/3以内】
革新的な設備投資やサービス・試作品の開発、生産・業務プロセスの改善等を支援することを目的とした補助金。

以上、医療機関が受給可能な助成金・補助金の一部をご紹介いたしました。
上記以外にも、各自治体や財団による助成金や補助金もございます。都道府県単位での雇用促進に関する助成金や施設整備(病院の新築・改築)設備整備(医療機器等の購入)の補助金、医院開業誘致助成金・研究助成金など地域の特性に合せ多様なものとなっています。
各検索エンジンや各省庁ホームページのチェックをお薦めします。ただし、受給申請という場合に書類作成方法などで折角のチャンスを逃さぬように、助成金・補助金申請を得意とする社会保険労務士・税理士・会計士にご相談なさるもの一案です。

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