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医業経営ツールボックス 経営編 Vol.11

◆Vol.11 クリニックでの遠隔診療(オンライン診療)導入について

2018年4月の診療報酬改定により遠隔診療(後述はオンライン診療)の点数加算があり、内科の自院での導入を考え始めました。
どのような方法で導入を考えれば良いでしょうか?

診療科目の点・ご年齢とも、オンライン診療導入には適していると言えます。
ただし、導入にあたっては自院の患者層の分析・今後の予測・経営方針の検討が重要です。その上で、各業者主催の説明会やセミナーへ参加、自院に最適なシステム導入をお勧めします。

まず最初に、今回の診療報酬改定でのオンライン診療について概要を簡単にご紹介します。

表 診療報酬に新設されたオンライン診療関連項目と算定要件について
新設 診療報酬名称『オンライン診療料』
点数 70点/月
算定可能な
患者
1.初診および急病急変患者以外で、初診から6カ月以上経過していること
2.特定疾患療養管理料、てんかん指導料、難病外来指導管理料、糖尿病透析予防指導管理料、地域包括診療料、認知症、地域包括診療料、生活習慣病管理料または在宅時医学総合管理料を算定している患者
算定要件 1.患者の同意を得た上で対面診療とオンライン診察を組み合わせた療養計画を作成し、当該計画に基づき診察を行った上でその内容を診療録に添付していること
2.当該保険医療機関に設置された情報通信機器を用いて診察を行うこと、オンライン診察を行う医師は対面診療を行っている医師と同一の医師であること
3.対面診療の間隔は3カ月以内
施設基準 1.緊急時に一定時間内(概ね30分以内)に診察可能な体制を有していること
2.1カ月当たりの再診料(電話等再診は除く)およびオンライン診療料の算定回数に占めるオンライン診療料の割合が一定割合以下(1割以下)であること
新設 診療報酬名称『オンライン医学管理料』
点数 100点/月
算定要件 1.前回対面受診月の翌月から今回対面受診月の前月までの期間が2カ月以内の場合に限り、次回対面受診時に所定の管理料に合わせて算定
2.対面診療で管理料等を算定する月においては、オンライン医学管理料は算定できない
3.対象となる管理料等を初めて算定してから6カ月の間は毎月同一の医師により対面診療を行っていること
4.対面診療の間隔は3カ月以内
施設基準 オンライン診療料の施設基準を満たしていること

参考:厚生労働省資料 オンライン診療の推進(平成30年3月9日)

遠隔診療は、当初は医療過疎地での問題解消のために進められてきたものですが、現在は通院困難な高齢者の患者様、生活習慣病など慢性疾患の会社員、子育てに奮闘するママさんなど、通院が出来ないことで治療を中断するケースへの対応として、患者サービス向上の点で有益と考えられています。
しかしながら、対面診療と同等の適切な診療が行えるか、疑問視する慎重派の意見もあります。ご自身が納得する診療が提供できるシステム選びの為に、この点も導入検討にあたり、念頭においていただければと考えます。

次に、導入検討の方法・運用留意点を幾つかご紹介します。
詳細は、厚生労働省ホームページオンライン診療の適切な実施に関する指針」平成30年3月が公開されていますのでご覧ください。

●自院分析
オンライン診療は、前記の要件を満たすことで加算可能となりましたが、自院の診療科目、患者層の分析やシステム導入に関する院内環境について検証が必要となります。

1.患者層分析
・現状でのオンライン診療として算定可能と思われる患者層の割合
再診率・慢性疾患患者割合・在宅診療対応数の把握等を行ってください。
尚、高齢者の場合、情報通信機器に不慣れな場合も多いためこの点も注意が必要です。
・将来(5年先程度)の来患予測(自院近郊の年齢別人口分布を参考に検証)
・現在、診療予約システムを導入している場合は、オンライン診療料加算により予約診療特別料金の徴収はできなくなりますので、その収支バランスも検証が必要です。

2.院内環境検証
・情報管理に関する万全なセキュリティ対策
オンライン診療は、医師と患者において情報通信機器を介し、診察及び診断を行う行為となりますので、医療情報の漏洩や改ざんに対する対策は、最重要ポイントです。
・情報通信機器に強いスタッフの存在
円滑な導入には、通信機器に不慣れな患者層に対する適切な説明・指導が可能なスタッフが必須です。

●導入システムの選択
1.自院に最適なシステム選択
オンライン診療システムは、多様な事業者が提供していますが、それぞれ特色があります。インターネット上で検索すると、無料体験やデモ画像、導入事例を院長のコメント付きで公開、導入セミナー開催など多様なスタイルで自社のシステム紹介を行っています。
病院・クリニックの形態の違いだけでなく、レセプトソフトとの連携の場合など自院の求める形態に似た事例を見つけることは重要なポイントです。
導入済みのドクターのコメントは、参考になる点が多いのではないでしょうか。

2.必ず受けたいセキュリティ対策への説明
システム提供事業者のセキュリティ対策への姿勢が万全であるかを判断することが重要です。
 利用時の権利、義務、リスク等を明示し、理解しやすい形態で、情報漏洩・不正アクセス等のリスク、医師・患者様双方に対するセキュリティ対策の内容、患者様への影響等について、説明資料等を作成し十分に説明できているか判断が必要です。
セキュリティやプライバシーに関する規約等は制作されているかの確認
 セキュリティ対策の内容、セキュリティ事案や損害発生時の責任の所在、データ保存の有無や保存内容等について確認してください。
・医師側に対するセキュリティ対策だけでなく、患者様側へのセキュリティ対策も十分であるか、見落としがちな点です。確認を忘れずに。
ID、パスワード、管理者権限の管理について
 パスワードの更新頻度や更新方法・管理者権限設定等は、複雑であれば安全性は高まりますが、複雑すぎると運用に支障がきたす場合も考えられます。安全と運用の利便性を考えた管理方法を使用者目線で生み出しているか検証してください。

3.スタッフ、患者様への説明に関する対応は万全か
オンライン診療は、患者様の意志により提供する診療のため、登録やログイン方法の煩雑さで躊躇される場合も考えられます。スタッフにもわかりやすく、患者様にも簡潔に説明可能なツールが提供されることがスムーズな運用に繋がります。

4.トラブル時のサポート体制は万全か
使用者が医師と患者様、しかも離れた場所での診療であるためシステムや使用方法のトラブルにはサポートセンター等の対応が充実していることが求められます。
この点の確認は必須です。特に患者様への対応にどの程度ウェイトをおいているかは、システム事業者選択には大きなポイントとなると思われます。

以上、導入検討時の留意点をご紹介しました。いずれにしても自院の分析と今後の経営方針の決定が、最良の出会いとなると考えます。十分な検討をお薦めいたします。
最後に、オンライン診療システム提供業者を幾つかご紹介いたします。自院に最適な事業者選びの参考にご覧ください。

●参考資料 オンライン診療ソフト提供事業者例(順不動)

ソフト名 提供事業者名
CLINICS 株式会社メドレー
ポケットドクター MRT株式会社
curon(クロン) 株式会社情報医療
リモートドクター 株式会社アイソル
YaDoc(ヤードック) 株式会社インテグリティ・ヘルスケア
MediTel テックファーム株式会社
ポートメディカル ポート株式会社

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