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医業経営ツールボックス 閉院編 Vol.2

◆Vol.2 閉院によるクリニック譲渡(賃貸)時の医療機械の扱い

現在内科クリニックを盛業中ですが、後継者がおりません。患者さんもついており第三者にクリニック(自己所有)を譲渡して継続したいと考えています。医療機器もX線・CTなどは15年前のものですが現役で使用しています。
この医療機械も併せて譲渡できるのでしょうか?

閉院後、承継者(第三者内科医)に医療機器を継続使用してもらうことは、譲渡元の先生にとっては、長年使用されているため、何ら問題を感じないものでしょう。また、承継者にとっても当面の費用負担を軽減できるというメリットがございます。

ただし、ご質問の様に中古医療機器買取業者を介さない私人間での医療機器の譲渡に関しては、注意していただきたい点がございます。また譲渡しない場合の処分方法も参考までにご紹介します。

1)法的な注意点
各医療機器には、それぞれ耐用期間(経理上の耐用年数とは異なる)・保守部品の保有期間というものがございます。こちらは一般的な工業製品とは異なり各医療機器の精度等により製造元により各々設定されております。
(現在は使用説明書等に明示義務がございます)
この期間を経過した場合は、修理・メンテナンスが難しくなるという目安の期間です。もちろん、上記の期間を経過しても、適切な保守点検を行えば使用することに問題があるものではありませんが、第三者に譲渡する折には、注意が必要です。

薬事法施工規則第170条には下記の通達がございます。
≪第170条 中古医療機器販売時には、製造元メーカーに通知すること≫
本通達は、基本的に販売を業としている場合に適用されるもので、個人間での場合は該当しないとの厚生労働省の見解もありますが、日本医療機器産業連合会(医機連)は説明会において、医師間の機器のやりとりは1回限りのものであっても、製造販売業者への通知が必要であるという見解を示しております。

このように、医師間の医療機器譲渡に関しては、後々のトラブル回避を考えると製造販売業者へ通知確認をお薦めいたします。
その折にメンテナンスが必要である場合の費用負担については、当事者にて充分ご相談の上、譲渡なさる事をお薦めいたします。一般的に13年以上経過した医療機器ついては、耐用期間超過、パーツ不足による修理不能が考えられます。そのため有償譲渡は難しいとお考えください。
では、無償譲渡であれば問題ないのではとの考え方もございますが、その場合でもやはり、万一故障等により事故が発生した場合を考え、製造元への確認をお薦めいたします。

2)承継時に承継者が医療機器の継続使用を望まない場合の対応
残念なことに、年式の古いものについては、承継者が使用を希望しない場合も考えられます。
その場合は、所有者側の適切な対応が必要となります。一般的と思われます対応方法をご紹介します。

◎買取業者依頼のポイント
対応としては、いきなり処分の前に、中古医療機器買取業者に見積を依頼する方法がございます。国内の一般的な中古医療機器買取市場以外に、年式が古い物でも海外の発展途上国に販路を有する業者など、買取可能な年式が幅広い業者もあります。
信頼のおけるコンサルタントにご相談いただくか、インターネット等で、中古医療機器買取業者で検索し、無料査定を依頼してみることをお勧めします。
なお、その場合、業者が取扱商品を限定している、年式を限定しているなど得意分野を明記していることがありますので、処分予定の機器が該当するかどうか可能な限りの調査を行い依頼先を選択しましょう。
その後、買取不能と回答が出た場合は、処分業者の選定へと移行する手順が、永年使用した医療機器を大切にする結果になるのでは思います。

◎処分業者選定のポイント
買取業者と処分業者は、各々別な業者あるいは、買取と処分を併せて請け負う業者がございます。すべてを一括処分するしかないものか確認したい場合は、買取・処分どちらも請け負う業者に最終見積もりを依頼してみることも一案です。
また、処分を依頼する医療機器に大型のものが含まれる場合、解体・搬出・処分と作業も多岐に亘ります。そのため、同一業者が全ての作業を一括で請け負うことが可能な業者を選択すると、処分に関わる日程調整・産業廃棄物処理書類など手続きが簡略になる利点があります。また、各種不要な備品についても併せて処分を依頼できる業者などもありますので、見積依頼前に、処分希望物品リストなどを作成することをお勧めします。
承継者が継続使用を希望する物品以外は、基本的に処分の対象となりますので、細部にわたり検証し、依頼漏れのないよう努めましょう。
こちらもコンサルタントのアドバイスや、インタ-ネット等の情報を活用し、自院の条件に合った業者を見つけましょう。

なお、残存医薬品について処分を行う場合は別途の扱いとなりますので、今回はご紹介を控えます。
以上、承継者への医療機器の譲渡についての留意点並びに医療機器処分方法をご紹介いたしました。

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