株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

医業経営ツールボックス 閉院編 Vol.4

◆Vol.4 閉院時の医療機器の処分について

閉院を考えています。継承か完全閉院かでも違ってくることでしょうが、一般的に医療機器の処分はどのように考えるべきでしょうか?

ご質問が一般的な処分とのことですが、閉院の形態や現在の所有形態などで違ってまいります。また永年使用していた医療機器に関しては、資産価値ばかりでなく愛着もあり、処分することがしのびなく、何とか有効利用をとお考えになるドクターは多いかと思います。

有効利用を含めた処分にあたっては、いくつかのケースが考えられますので、下記にご紹介いたします。
まず基本的なポイントは下記3点となります。

・売却の場合、思いのほか高くは売れない。
・廃棄処分の業者選びは慎重に! 処分品の処分証明は必須と考えましょう。
・医療機器は産業廃棄物、業者選びで迷ったら、管轄保健所へ!

閉院の形態別ポイントは下記にご案内します。

1)閉院し、別の医師に継承する場合
A.自己所有している機器
・継承する医師が引き継ぐものについては、有償か無償かを双方で取り決めることになります。その場合、X線装置、超音波診断装置、心電計、等メンテナンスを必要とする機器については、製造メーカーと事前に打ち合わせを行ないましょう。
B.リースしている機器
・リースしている医療機器を新規継承する医師が使用する場合、事前にリース会社と打ち合わせを行ない、リースを継承する契約を締結しなければなりません。ただし、リースを継承しない機器がある場合、その分については残りリース料を精算し、産業廃棄物処理業者に廃棄を依頼することになります。いずれにしても、リースしている医療機器については必ずリース会社に事前相談を忘れずに。

2)継承なしの完全閉院の場合
A.自己所有している機器
・医療機器の中古販売業者に連絡し、買い取ってもらう。使用年数にもよるが、買い取り不可のものや買い取り価格ゼロのものもあります。いずれにしてもこちらが思っている以上に安く買いたたかれるとお考えください。
・買い取り不可のものは産業廃棄物処理業者に有料で引き取ってもらうことになります。どの業者が良いかよくわからない場合は当該保健所か、自治体の役所に問い合わせなさることをお薦めします。
・注射針など医療廃棄物として処理していたものについてはこれまで通り、取引のある医療廃棄物業者に依頼しましょう。
・ネットで『大型医療機器から事務機器、小さな医療材料に至るまですべてを一括買い取る』という広告をよく見かけますが、実際には値がつくものは僅かで、殆どは処分費用が発生するものばかりと言うのが実態です。一括で処分を考える場合は、最終処分まできちんと責任を持ってやってもらえる業者であることを確認し、処分証明書の発行などにより、個々の処分品の最終処理方法を全て確認できる業者を選びましょう。全部まとめて持っていってくれるのは楽でよいと、安易に考えないことが大切です。
B.リースしている機器
・リース料が残っている機器に関しては閉院までに精算し、契約満了とする。その後、産業廃棄物処理業者へ依頼し廃棄処理となります。(処分費は診療所負担となる)
・リース期間満了後に買い取って自己所有としている機器に関しては、前述(2-A)自己所有と同様の方法で処分することになります。
・閉院する前に、必ずリース会社に相談し、勝手にリース機器を廃棄処理することのないよう留意してください。

3)個人診療所を廃止し、医療法人にする場合
A.自己所有している機器
・一般的には、医療法人化の際、医療機器や什器は現物出資を行ない法人の資産とするケースが多いようです。
・法人化にあわせて個人(診療所)の医療機器を廃棄し、新しい機器を買うというケースもあります。この際は前述(2-A)の方法で廃棄処分しますが、新しい機器を購入する業者にその手続きを依頼する方法もあります。ただし、機器メーカーや販売業者は産業廃棄物の免許は持っていないため、産廃業者の紹介・段取りを行なってもらうということになります。
B.リースしている機器
・事前にリース会社に相談し、個人から医療法人への契約先変更を行ないましょう。
・法人化の際、一部リース機器を法人に継承しない場合には、その機器のリース料を精算し、廃棄処分を行います。継承する機器については契約先変更(個人⇒法人)を行ないます。

●まとめ
医療機器の廃棄処分にあたっては廃棄処理業者に委託はするが、最終的な処分義務に関してはその所有者が負う責任が発生することを念頭に、慎重に業者を選択することが大切です。
永年の診療のパートナーであった医療機器です。大切にその最後を看取れたと感じられる処分方法を見つけることをお薦めします。そのことが充実したドクターズライフの要件の一つとお考えください。

> 目次に戻る <


Vol.1 Vol.2 Vol.3 Vol.4 Vol.5 Vol.6 Vol.7 Vol.8



page top