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(3)ANCAの意味を考える[特集:検査値で見きわめる膠原病─検査値の意味を考える]

No.4869 (2017年08月19日発行) P.40

押川英仁 (熊本赤十字病院リウマチ・膠原病内科)

登録日: 2017-08-17

最終更新日: 2017-08-16

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  • 抗好中球細胞質抗体(ANCA)はANCA関連血管炎以外にも様々な疾患や薬剤で陽性となる

    感染症では,特に亜急性細菌性心内膜炎や結核,薬剤では抗甲状腺薬やヒドララジン,ミノサイクリンなどに注意が必要である

    ANCAは血管炎のスクリーニング目的で測定すべきではなく,原因不明の発熱や体重減少などの全身症状が持続する場合や病変が多臓器に及ぶ場合など,臨床的にANCA関連血管炎が疑われる場合に測定する

    1. どのような場合に検査をオーダーするか

    抗好中球細胞質抗体(anti-neutrophil cytoplasmic antibody:ANCA)はANCA関連血管炎〔顕微鏡的多発血管炎(microscopic polyangiitis:MPA),多発血管炎性肉芽腫症(granulomatosis with polyangiitis:GPA),好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(eosinophilic granulomatosis with polyangiitis:EGPA)〕の診断補助目的に測定される。

    ANCAはANCA関連血管炎以外でも高頻度に陽性になることや,疾患自体の頻度が比較的稀であること,ANCAが陰性の血管炎もあることを考慮すると,血管炎のスクリーニング目的で測定すべきではなく,臨床的にANCA関連血管炎が疑われる場合に測定することが重要である。ANCA関連血管炎を疑うきっかけとなるのは,原因不明の全身症状(発熱や倦怠感,体重減少,関節痛や関節炎,筋肉痛など)が持続する場合や,病変が多臓器(皮膚,眼,耳,鼻,肺,腎臓,消化器,神経など)に及ぶ場合などである。腎限局型MPAや限局型GPAなどの臓器限局型では全身症状が乏しい場合もあるので,その点は注意が必要である。原因不明の発熱や体重減少,筋痛,関節痛や関節炎,慢性血性鼻汁や痂皮,副鼻腔炎,中耳炎,強膜炎,ぶどう膜炎,眼窩後部腫瘤,緩徐に発症する咳や息切れ,抗菌薬に反応しない両側肺浸潤影,多発肺結節影,非結核性空洞影,肺胞出血,声門下・気管狭窄,成人発症喘息,潜血尿・蛋白尿,全身症状を伴う紫斑や皮疹,多発単神経炎やその他の末梢神経障害(脳神経麻痺を含む)の少なくとも1つ以上を認める場合に測定するのが望ましい1)2)

    1 問診のポイント

    血管炎でみられる症状は,障害される血管のサイズとその障害の性状や程度(狭窄,閉塞,瘤形成,破裂)によって決まる。表1 3)は血管炎でみられる臨床症状・所見を血管のサイズ別に整理したものである。

    ANCA関連血管炎では主として小型~中型血管が障害されるため,これらのサイズでみられる臨床症状がないか注意しながら問診を行う。特にANCA関連血管炎を疑う場合には,眼症状(発赤,疼痛,羞明感など)や,耳症状(難治性・慢性中耳炎,急速に進行する難聴),鼻症状(慢性副鼻腔炎,慢性血性鼻汁・痂皮,鼻腔粘膜潰瘍),口腔・咽頭症状(潰瘍,嗄声,気道閉塞)の有無,および喘息の既往,特に成人後や最近になって発症した喘息症状について漏らさず聴取することが重要である。

    全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus:SLE)やシェーグレン症候群など他の膠原病を疑う病歴の有無や,最近投与された薬剤歴,最近の歯科治療歴,肝炎・結核の既往や家族歴,悪性腫瘍既往の有無,発熱した子どもとの接触歴(パルボウイルスB19),不特定多数との性交渉歴(HIV)などの聴取も忘れずに行う。

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