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(1)変形性股関節症発症のメカニズムと進行(病期・症状) [特集:変形性股関節症治療の実際]

No.4794 (2016年03月12日発行) P.18

松原正明 (玉川病院副院長・股関節センター長/東京医科歯科大学臨床教授)

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-01-26

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  • 変形性股関節症は,一次性と二次性に大別されるが,わが国では約80%が二次性である

    変形性股関節症の発症メカニズムについては,これまでのところ不明である。しかしながら,股関節症に至る要因としては,発育性寛骨臼形成不全,発育性股関節形成不全などが大半を占めている

    変形性股関節症は“前股関節症”という変形前の段階から,初期・進行期・末期に分類され,一般的には病期が進行するに従い症状も増悪することが多い

    変形性股関節症は進行性の疾患であり,進行すると歩行などの運動時に鼡径部に痛みを生じ,場合によっては大腿部や膝に痛みを感じる症例もある

    1. わが国における変形性股関節症の現状

    変形性股関節症とは,日常の歩行や移動に際し必要とされる最も重要な下肢関節の1つの大関節である股関節の軟骨に変性摩耗が生じる疾患で,軟骨の消失に伴って引き起こされる関節炎による強い疼痛と関節可動域の減少に伴う日常生活動作の制限を主体とした病態である。一般に変形性関節症の成因は,解剖学的な異常がみられないものの,過度の使用や加齢に伴い軟骨の摩耗が生じることによって発症する一次性関節症と,様々な股関節部の外傷や感染,関節リウマチ,さらには発育途上における関節の形成不全などに起因して発症する二次性関節症に大別される。
    わが国における変形性股関節症の約80%が二次性股関節症とされており,その中でも発育性寛骨臼形成不全や発育性股関節形成不全(先天性股関節脱臼:先股脱)に起因したものが最も多いとされ,罹患者の約90%が女性である。過去には,発育性股関節形成不全に伴うものが主であったが,近年では,乳幼児期のスクリーニングと適切なオムツ指導によって,その発生数は減少しており,1000出生当たりの発生数は2未満となっている。しかしながら,寛骨臼形成不全は,乳幼児期に特徴的な症状をきたすことが少ないばかりでなく,有効な治療法が確立しておらず,また若年期には無症状であることも多い。そのため,壮年期になって,ある日突然足の付け根に生じる痛みを自覚することで,初めて自身が変形性股関節症であることを知る患者も数多く存在している。
    また,その一方で高齢者の増加に伴い,かつては少数であった一次性股関節症や骨粗鬆症を基盤とした骨脆弱性軟骨下骨折に起因した股関節症もゆるやかに増加しているようである。したがって,股関節症を発症する年代としては,青年期より高齢者までであり,幅広い年齢層に発症する疾患であると言える。

    2. 変形性股関節症発症のメカニズム

    現在までのところ,変形性股関節症発症のメカニズムに関しては,力学的な環境因子,遺伝子による発生因子など様々な検討がなされているものの,一定の見解がないのが実情である。したがって現時点では,様々な因子ならびに外傷や過度の荷重などの外的要因が重なることによって生じる多因子疾患である,と考えられている。

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