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(1)スポーツによる頭部外傷の発生状況[特集:スポーツによる頭部外傷の最前線]

No.4859 (2017年06月10日発行) P.26

荻野雅宏 (獨協医科大学脳神経外科准教授)

登録日: 2017-06-09

最終更新日: 2021-01-06

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  • スポーツによる頭部外傷の発生には,直線加速度より回転加速度の関与が大きく,脳振盪と急性硬膜下血腫が多くみられる

    受傷頻度が高い競技種目として,わが国ではラグビー,柔道,体操など,諸外国ではアイスホッケー,ラグビー,アメリカンフットボールなどが挙げられる

    レクリエーションも含めた発生頻度は不明だが,わが国ではスノーボードによる頭部外傷が多い

    ヘルメットや防具では,回転加速度による頭部外傷を防ぐことはできない

    スポーツによる頭部外傷については,医療従事者のみならず一般人の理解が重要である

    1. スポーツによる頭部外傷の発生機序

    スポーツによる頭部外傷は,直線加速度を伴う強い直達外力が要因となる交通外傷などとは異なり,主として回転加速度が脳を揺さぶり,脳実質を歪ませることによって生じると考えられている1)
    脳実質が歪めば神経線維は伸展あるいは離断され,いわゆる「びまん性軸索損傷」をきたす。脳振盪は,(古典的には)びまん性軸索損傷の軽症例ととらえられており,スポーツ現場でしばしば経験される。また,加速度により脳が頭蓋内で回転すると,脳表と硬膜を結ぶ架橋静脈が傷つき,ここから出血して急性硬膜下血腫に至る(図1)。
    両者の病態はまったく異なるが,力学的な背景には共通点が多く,これらを予防するための方策は一緒に論じられることが多い。

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