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下大静脈内腫瘍栓を伴う肝細胞癌の治療 【BCLCガイドラインでは分子標的薬が推奨されているが,わが国では主に手術治療を選択】

No.4832 (2016年12月03日発行) P.52

藤山泰二 (愛媛大学肝胆膵・乳腺外科准教授)

高田泰次 (愛媛大学肝胆膵・乳腺外科教授)

登録日: 2016-11-30

最終更新日: 2016-11-28

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肝細胞癌は進行すると肝内の脈管に腫瘍栓を形成する。頻度的には門脈腫瘍栓が最も多く,時に胆管内腫瘍栓や肝静脈内腫瘍栓を経験する。肝静脈内腫瘍栓は,欧米で頻用されるBarcelona Clinic for Liver Cancer(BCLC)のガイドラインでは,分子標的治療薬のソラフェニブが唯一推奨される治療法であるが,わが国では,急性肝不全や肺動脈塞栓による突然死の危険性があることから,手術を中心とした治療法が選択されてきた1)

腫瘍先進部が,右房内に進展した場合は体外循環が必要となるが,腫瘍栓が下大静脈(IVC)内に留まる場合は,全肝血流遮断(THVE)にて手術が可能である。

THVEのための肝上部IVCの確保には経縦隔心嚢内IVCアプローチ法が有用である2)。この経路は開胸することなく心嚢内に到達可能で,心嚢内IVC背側(Gibbon’s space)の剝離に伴う出血もない。手術成績の報告は少ないが,Kokudoらによると,生存期間中央値は1.39年,再発までの期間は0.25年であったと報告している3)。臨床試験におけるソラフェニブやTS-1による補助化学療法は否定的であるが,症例により有効な場合もあり個別の対応が必要である。現在,新規の分子標的薬が検討され,また,重粒子線治療の有効性も報告されており,今後,下大静脈内腫瘍栓を伴う肝細胞癌に対する集学的治療の開発が望まれる。

【文献】

1) 日本肝臓学会, 編:科学的根拠に基づく肝癌診療ガイドライン 2013年版. 第3版. 金原出版, 2013.

2) Tohyama T, et al:Hepatogastroenterology. 2015;62(139):667-9.

3) Kokudo T, et al:J Hepatol. 2014;61(3):583-8.

【解説】

1)藤山泰二,2)高田泰次 愛媛大学肝胆膵・乳腺外科 1)准教授 2)教授

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