これまで予後良好と考えられてきた非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)は,この30年間で早期治療が必要な虚血性心疾患発症の危険因子であることがわかってきた。NAFLDは肥満と関連し動脈硬化を起こす生活習慣病で,日本人の約3人に1人が罹患している。早期病変である単純性脂肪肝(NAFL)は虚血性心疾患の発症を約1.3倍上昇させ,非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)に進展すると約3.0倍まで上昇する。そのため,早期治療が重要と考えられる。
NASHの確定診断は肝生検であるが,侵襲性が高いため早期診断には向かない。臨床的には(1)腹部超音波検査で脂肪肝があり,かつ,(2)血清ALT値が40IU/L以上または血小板が15万/μL以下の場合はNASHを強く疑い,早期治療すべきである。米国消化器病学会のガイドラインによると,治療においてピオグリタゾンやビタミンEが一部有効であるが,最もエビデンスレベルおよび推奨グレードが高い治療法は,食事・運動療法による減量だという(文献1)。したがって,NAFLDは早期に疑い,減量指導をすることが最も治療効果が高い。
世界では,この30年でBMIが25kg/m2以上の肥満患者が8億8500万人から21億人にまで増加したという(文献2)。今後もさらに増え続けるであろう肥満やNAFLDに対して,日常診療における患者との会話や減量指導が予防・治療に最も貢献できると考えられる。
1) Chalasani N, et al:Gastroenterology. 2012;142(7):1592-609.
2) Ng M, et al:Lancet. 2014;384(9945):766-81.