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ストレスチェック制度と精神科医

No.4763 (2015年08月08日発行) P.53

中村 純 (産業医科大学精神医学名誉教授)

登録日: 2015-08-08

最終更新日: 2016-10-26

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労働安全衛生法(安衛法)が2014年6月に改正され,一般健診と同様に労働者に対して,メンタルヘルスチェックが行われることになり,2015年12月に施行が予定されている。本法案は長時間労働者に対する面接指導と同様の枠組みであり,メンタルヘルス不調者の一次予防を主目的とするということになった。
従業員50人以上の産業医が選任されている事業場の労働者に対してメンタルヘルスチェックを行い,高ストレスと判断された者に対しては,労働者の申し出によって医師による面談を行い,労働者にストレスへの気づきを促し,予防的な観点からメンタルヘルス不調者を減少させ,さらに職場環境の改善をめざす法案となった。ある意味,理想的な法案となったが,その運用や事後措置をどのようにするか,課題が山積している。
たとえば,今回対象にならなかったが,労働者数が多く,課題も多い小規模事業所への対応,健診機関やEAP(employee assistance program)などの役割と実施力,さらには,面接指導を行う産業医などの役割と責任,あるいは面接スキルなどが課題である。特に本法案の適応が労働者にとって不利益を与えないという重大な課題がある。
職場のメンタルヘルス不調者の増加から,その予防を主目的として本法案が成立したが,円滑な運営をめざすためには,産業医として機能する精神科医の育成,そして産業医には精神医学の理解の向上,さらに産業医と精神科医とのより緊密な連携が必要であると考えられる。
そもそも,一般健診とは別にこのような制度を創設しなければならないということは,精神疾患が依然スティグマであることを示していると思われる。

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