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高齢者心房細動と心不全 [プラタナス]

No.4809 (2016年06月25日発行) P.1

羽田勝征 (榊原記念クリニック/埼玉医科大学総合医療センター 客員教授)

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-01-23

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  • 91歳、男性。十数年前の初診時からの心房細動で心雑音なく、降圧薬と抗凝固薬にて定期的に通院しているお元気な方であった。ある時風邪をこじらせて近くの病院を受診、下肢に浮腫を指摘されて心不全の診断で緊急入院を勧められたが、拒否したために利尿薬を処方されて2週間後に私の外来に元気でおいでになった。来院時には浮腫は消失しており、その時の胸部X線(写真左、心胸郭比60%)ではうっ血や胸水を認めなかった。私が、心臓の働きはよいと言っていたため、「心臓の機能が低下して、水が溜まっている」との診断が腑に落ちなかったと言われる。若い医師は、心臓が大きいのに薬が少ないことに驚いていた、というのが患者の報告である。初診時の胸部X線写真は心胸郭比50%であったが、4年前は54%である(写真右)。

    外来での心エコー図所見は、左室正常、弁に器質的異常は認めなかったが両心房の拡張は進み、僧帽弁逆流は軽度のままで三尖弁逆流は軽度から中等度に進行していた。再検査では左心機能は良好で、僧帽弁逆流は不変、しかし、右房拡張が進行して肺高血圧はないが、三尖弁閉鎖不全が進行していた。本例は右心不全と思われた。心陰影の拡大は必ずしも左室の病気とは限らない。左室が正常でも心房拡大が心陰影拡大の一因となる〔Hada Y:J Cardiol.1995;26(1):51-4〕ことを裏付ける症例であった。

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