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静脈奇形の痛みに対する治療

No.4697 (2014年05月03日発行) P.64

佐々木 了 (KKR札幌医療センター斗南病院形成外科/血管腫・血管奇形センター長)

登録日: 2014-05-03

最終更新日: 2016-10-18

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【Q】

静脈奇形の痛みに対する治療法選択について。海綿状成分が目立たない例や静脈石周囲に痛みがある例などへの硬化療法の適応を,KKR札幌医療センター斗南病院・佐々木 了先生に。
【質問者】
荒牧典子:慶應義塾大学医学部形成外科講師

【A】

静脈奇形(いわゆる海綿状血管腫など)は全身のどの部位・臓器にも発生し,疼痛,発熱,感染,出血,変色,醜状変形などを主訴とします。このうち疼痛は患者のQOL低下につながりやすいため,早急な対応が望まれる症状の1つです。疼痛は患部の下垂や起床時など血液貯留増加時に伴うことが多いのですが,月経などのホルモン変化や病変内の静脈石や血栓性静脈炎によるものもあります。治療は,圧迫や鎮痛薬投与などの保存的治療と,切除術や硬化療法などの侵襲的治療に大別できます。
弾性ストッキングなどを用いた圧迫療法は血液貯留を減少させるため,疼痛緩和,血栓・静脈石形成の予防,凝固障害の減弱に効果的です。ただし,過度の圧迫は疼痛を悪化させる場合があり,小児では成長抑制につながる恐れがあります。アスピリン投与は血栓・静脈石予防に有用とされます。しかし経験上,疼痛緩和に対する効果は,日常頻用されるNSAIDs製剤のほうがアスピリンより高いと思われます。近年,オピオイド系鎮痛薬の一部が内服薬やテープ徐放剤として悪性腫瘍以外にも保険適用となっており,NSAIDs無効例はこれらの投与で疼痛コントロールしています。
静脈奇形に切除術と硬化療法のどちらが有用かは一概に言えませんが,限局性病変で術後瘢痕が目立たない部位には切除術は有用です。完全切除できない場合は再発が多く,硬化療法を併用することが多くなります。また,皮膚欠損を伴う静脈奇形や,重度の出血や潰瘍を伴う静脈奇形,既に肥大化し静脈奇形成分の目立たない病変,静脈石とその周囲の疼痛などに対しては,切除術は有用です。
硬化療法は皮膚に瘢痕を残す危険性が低く,有効率が高いことから,静脈奇形治療の第一選択と考えられますが,複数回の治療になりうることや,肺塞栓症,ヘモグロビン尿,薬剤アレルギー,神経麻痺などの合併症リスクに関して熟知しておく必要があります。
硬化療法症例の半数以上で疼痛スコアが50%以上改善したという報告もあり,病変の縮小だけでなく疼痛改善に関しても有用性が高く認められます。また,硬化療法後の患者質問票での評価で,症状,機能,整容がそれぞれ約30%以上で得られたとの報告もあり,術後QOLを向上させる可能性が示唆されています。突発性,発作性に生じる疼痛に対しても,疼痛部位にピンポイントで硬化療法を行うと疼痛軽減が得られる場合があります。ごく微細な動静脈瘻による疼痛の場合も同様に対処できますが,技術的に高度になることが難点です。

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