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シスチン尿症の患者と保因者の鑑別は可能?保因者への治療は?【シスチンおよびアミノ酸値で評価し,結石形成の可能性がない保因者の場合は治療の必要なし】

No.4787 (2016年01月23日発行) P.63

長尾雅悦 (国立病院機構北海道医療センター 統括診療部長/小児科)

登録日: 2016-01-23

最終更新日: 2016-12-14

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【Q】

(1)シスチン尿症の遺伝子を持っていて発症しない保因者においても,尿中シ
スチンが増加しているとされますが,その状態で保因者とそうでない患者を鑑別することは可能ですか。具体的な鑑別法を教えて下さい。
(2) シスチン尿症の保因者においても治療は必要ですか。もし必要であれば,どのような治療が適していますか。 (埼玉県 I)

【A】

[1]シスチン尿症の鑑別方法
シスチン尿症の古典的な分類におけるⅡ,Ⅲ型では,保因者(ヘテロ接合体)においても尿中へのシスチン排泄が増加しています。尿アミノ酸分析によりシスチンの1日総排泄量を測定し,400mg/日以上の場合は患者(正常は30mg/日未満),30mg以上400mg/日未満の場合は保因者と診断しています(文献1)。
別の報告では,250mg/gCr以上を基準値として患者と保因者の判別をしています(文献2)。さらに部分尿でのシスチンと二塩基性アミノ酸(オルニチン,アルギニン,リジン)の排泄量の総和(mmol/gCr)の違いより,保因者と患者を鑑別する方法も提案されています。保因者(ヘテロ接合体)では,この総和が10mmol/gCr以下となります(文献3)。
上述の方法でも,稀にⅡ型の保因者の一部で保因者と患者との境界域の値を示すことがあります。この際は,シスチンおよび二塩基性アミノ酸の経口負荷試験を行い,その血中濃度上昇が対照と差がないことを確認することで判別が可能です。
[2]シスチン尿症保因者の治療法
原則的に,シスチン尿症保因者では治療の必要はありません。しかし,上述のⅡ型の保因者の一部で,結石形成の可能性があるシスチン排泄量を示すことがあります。この場合は,十分な水分摂取により尿量を3~4L/日として尿中シスチン濃度を低下させます。夜間における水分補給が特に重要です。また,尿をpH 7.4以上にアルカリ化するため,(1)重炭酸ナトリウム1mEq/kg,経口,1日2~3回,(2)アセタゾラミド5mg/kg(最大250
mg),経口,1日1回就寝時,(3)クエン酸製剤1日2~6g,経口,のいずれかを併用することが考えられます。定期的な(年3~4回)外来受診にて,早朝尿の尿比重測定とシスチン結晶の有無,尿中シスチン濃度測定を行い,必要に応じてX線や超音波検査による結石の有無の確認をします。

【文献】


1) Dahlberg PJ, et al:Mayo Clin Proc. 1977;52(9):533-42.
2) Harris H, et al:Ann Hum Genet. 1955;19(3):196-208.
3) Palacin M, et al:The Online Metabolic and Molecular Basis of Inherited Disease. 2015; DOI:10.1036/ommbid. 224.

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