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鳥(ガビチョウ)の騒音への対処法

No.4735 (2015年01月24日発行) P.64

川上和人 (森林総合研究所鳥獣生態研究室)

登録日: 2015-01-24

最終更新日: 2016-10-18

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【Q】

外来種の鳥であるガビチョウの騒音(鳴き声)に悩まされている。この鳥を自宅の庭に近づけないような方法はないか。 (東京都 K)

【A】

ガビチョウは,中国南部から東南アジアに自然分布する,チメドリ科の鳥類である。日本には,江戸時代から飼い鳥として持ち込まれ,1980年代から野生化した個体がみられている。現在は,本州の東北南部以南の各地,九州中北部で定着している。
この鳥は,日本の生態系に悪影響を与える可能性があるため,外来生物法(特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律)により特定外来生物に指定され,飼育や販売が規制されている。日本だけでなく,ハワイでも野生化し,在来の鳥の生息に悪影響を与えている。
ガビチョウは,とても縄張り意識の強い鳥で,自分の縄張りを主張するために非常に大きな声でさえずりを行う。特に,繁殖期である春先から初夏にかけては,非常に頻繁に鳴くため,今回の相談のように,騒音による迷惑を被る場合がある。
彼らは外来種ではあるものの,同時に鳥獣保護法(鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律)により捕獲や殺傷が禁止されている。このため,勝手に捕ったり殺したりすることはできない。また,たとえ家の近くにいる個体を捕ったとしても,周辺の個体があいた縄張りに入り込むため,根本的な解決にはならない。ガビチョウを減らすには,彼らにとってその場所の価値が低くなるように,環境を管理することが,選択肢の1つとなると考えられる。
ガビチョウは,低木層に藪が茂った環境を好んで利用する。最近は,林業の担い手の不足や,薪炭林の利用の減少などにより,十分に管理されていない雑木林や植林地が増えている。このような林が,ガビチョウの生息地を増やす要因の1つと考えられる。このため,放置されて茂った藪を減らすことができれば,騒音の被害も減少すると推測される。
しかし,このような藪には,日本人に親しまれているウグイスなども生息している場合がある。このため,藪を完全になくしてしまうと,在来の鳥のすみかまで減らすことになるので,注意する必要がある。
鳥は移動性が高いため,野生化すると根絶が難しい生物である。ガビチョウの分布は現在も拡大しており,いずれは東北南部から九州までの低山全域に定着すると予想される。今後,また同様の事例を増やさないよう,ガビチョウ以外の愛玩動物の管理にも,気をつけていく必要がある。

【参考】

▼ 川上和人:外来鳥ハンドブック. 文一総合出版, 2012.
▼ 日本生態学会, 編:外来種ハンドブック. 村上興正, 他 監. 地人書館, 2002.
▼ 自然環境研究センター, 編:日本の外来生物. 多紀保彦, 監. 平凡社, 2008.

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